従来型のEV化ではない、完全なフルモデルチェンジ
500e(チンクエチェント イーと読む)のスタイリングは、従来型そっくりのプロポーションで、全体的にわずかに大きくなっただけ。そのため、従来型のパワートレーンをモーターに変えて、ボディを少しモディファイしたのではと思われがちだが、96%を新設計したブランニューモデルだ。そして、この新型からフィアット500はBEVのみの「500e」となる。
最初に試乗したのは、エントリーグレードの「ポップ」。上級グレードの「アイコン」に対し、ヘッドランプはLEDからハロゲンに、クロームのサイドウインドーモールが略され、タイヤ&ホイールは17→16インチという違いはあるが、大きくは変わらない。何よりも、1957年に登場した「ヌォーバ500」をインスパイアしたスタイリングは、相変わらず可愛らしい。
インテリアでは、インパネがボディ同色パネルとなり、ファブリックシートの後席シートバックは一体可倒式、センターアームレストがないといった違いはあるが、装備的には不満はない。安全装備は少し簡略化されているが、衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警告、リアパーキングカメラなどは標準装備している。
比較的軽いボディに118psのパワーは、十二分な力強さを発揮
日本の5ナンバー規格に収まるコンパクトなサイズで、車両重量もBEVとしては比較的軽量な1320kgだから、センターダッシュのセレクターボタンを押してアクセルペダルを軽く踏めばスッと走り出す。モーターの最高出力は118psとなっているが、体感的にはもっとパワーがありそうに思える。加速時にはBEV独特のウイ〜ンという音が高まるものの、当然ながらエンジン車よりは静かだ。
ドライブモードは「ノーマル」だとアクセル操作はエンジン車に近い感覚だが、「レンジ」にすると回生が強くなり、いわゆるワンペダルで停止までできる。アクセルを戻したときの減速Gはけっこう強い。「シェルパ」にするとアクセルレスポンスが弱まり、エアコンが停止する。これはバッテリー残量が少なくなったときの緊急用だろう。街中をワンペダルで気楽に乗りたいならレンジで、高速などではノーマルで普通に乗るのがベターかもしれない。
都市高速の合流などでアクセルをベタ踏みすると、やはりBEV、普通のチンクエチェントからアバルトに変身したかのようにハンパではない加速を見せる。今回はコーナリングを楽しむようなシチュエーションはなかったが、市街地でも都市高速でもキビキビと小気味良く、しかもけっこう速く走れる。
ポップは16インチの55タイヤを履いていたが、高速走行などでは少し足まわりがバタつく感じがあった。またクルーズコントロールはアダプティブではないのだが、市街地ユースが中心なら、乗り味も装備も不満ないレベルにあるといえるだろう。