ボルボ初のBEV専用モデルとして登場したC40リチャージはどんなモデルなのか。ここではライバルと目される3台、レクサス UX300e、メルセデスEQ EQA250、テスラ モデル3 ロングレンジとともに、さまざまなじシチュエーションで乗り比べてみた。(Motor Magazine 2022年6月号より)

乗り比べることで見えたそれぞれの違いと共通項

ふたつのグループの違いは、実際に試乗しても明確に感じ取ることができた。たとえばモデル3は発進の際に強めにアクセルペダルを踏み込むと、まるで強打者のバットで打ち返されたボールのように、ドンッと過剰なほど加速し始める。その、瞬間的に加速度が立ち上がるダッシュ力は、電気モーターでなければ味わえない種類のもの。テスラはそのことを意識して、わざと軽いショックを生み出す発進マナーに仕立てているのだろう。

C40はこれに比べれば明らかにおとなしい。いや、モデル3並みのスタートダッシュにしようとすればできなくもなかったのだろうが、扱いやすさや安全性を考慮して、ボルボはあえてそこまで踏み込まなかったような気がする。

ただし、高速域でモーターのパワーを解放すれば、それこそ空気抵抗などなかったかのように車速を伸ばしていくことは、ヨーロッパで行われた国際試乗会で体験済み。この辺の、BEVらしさと既存の自動車の価値観を絶妙のバランス感覚でまとめあげたところが、いかにもボルボらしいと思う。

一方、EQAとUXはそこまで爆発的な加速感は感じられないものの、BEVらしいリニアリティの高さと良好なレスポンスが味わえる。また、パフォーマンスを敢えて抑えた関係で、足まわりを比較的ソフトに設定できたというメリットも存在する。そのため、2台ともゴツゴツ感が軽く、そして豊かなストローク感を味わえる乗り心地に仕上がっている。ほぼ同じ理由から、ロードノイズが全般的に小さいこともEQAとUXに共通する美点である。

これとは対照的にC40とモデル3の足まわりはややソリッド。ロードノイズもEQAとUXに比べれば大きめだが、いずれも十分に許容できる範囲にある。しかも、それと引き替えに、C40とモデル3はワインディングロードでの軽快なハンドリングを手に入れている。なかでも、モデル3よりも15cmほど全高の高いC40が、そのことを感じさせない安定したコーナリングフォームを示す点には驚嘆せざるを得なかった。

画像: テスラ モデル3ロングレンジ。インモーターの鋭い加速感と低重心による軽快なハンドリング。

テスラ モデル3ロングレンジ。インモーターの鋭い加速感と低重心による軽快なハンドリング。

BEVならではの操作感がC40とモデル3の特徴

BEVに相応しい新しい操作系を採り入れたという意味でもC40とモデル3には共通点がある。とりわけ、運転席に腰掛けたとき、目の前にステアリングホイールとステアリングコラムから生えた2本のレバーしか見当たらないモデル3のコクピットには、テスラ初体験のドライバーであれば驚くとともに軽い戸惑いを覚えるはず。

率直にいって、ドアミラーを調整するにしても、まずセンターディスプレイで調整モードを呼び出したうえで、ステアリングホイール上のロータリースイッチでミラーの角度を調整するという操作方法はやり過ぎといえなくもない。ただし、運転中に咄嗟に必要となる機能については、センターディスプレイを触らずとも直接、操作できるように工夫されている。

C40はこれに比べるとややマイルドな思想で、基本的な運転操作はXC40と変わらない。それでも、システムを立ち上げるメインスイッチを廃止したり(ドアを開けて運転席に腰掛ければ、自動的にシステムが立ち上がる)、パドルシフトを省略したり、ドライビングモード切り替えをセンターディ
ス プレイのなかに仕舞い込むなど、目に見える範囲のオペレーションをなるべく簡略化しようとする姿勢は感じ取れる。

グーグルベースのインフォテインメントシステムを搭載する点は他の最新ボルボと同じだが、強力な音声認識機能を備えたこのシステムを採用したのも、来るべきEV時代に備えるためと説明されれば、スッと腑に落ちるような気がする。

操作系でC40とモデル3が共通しているもうひとつのポイントが、ワンペダルドライブを可能にした点にある。ワンペダルドライブとは、ブレーキペダルを踏まずとも、アクセルペダルだけでほとんどの加減速調整ができる操作系のこと。それゆえ、雑なペダル操作をするとボディがガクガクと前後に揺れてしまうが、うまく使えば、ブレーキペダルで完全停止させるよりもスムーズに止まれるというメリットがある。

ちなみに「ワンペダルは苦手」と仰る方にひとつだけコツを伝授すると、走行中は基本的にアクセルペダルの上に足を乗せ続けるだけで、ずっとスムーズなドライブができるようになるはず。アクセルペダルから足を離すのは急減速や完全停止のときだけ、と覚えていただいてもいいだろう。

画像: メルセデスEQ EQA250。ングルモーターながらトルクフルな加速。日本未導入だが、本国には2モーターのEQA300/350 4マティックもラインナップ。

メルセデスEQ EQA250。ングルモーターながらトルクフルな加速。日本未導入だが、本国には2モーターのEQA300/350 4マティックもラインナップ。

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