自社開発の自動変速機「トヨグライド」を採用
発売から5年後の60年10月には、新設計の3R型4気筒OHVエンジンを積む1900シリーズを送り込む。排気量は1897ccで、グロス90ps/14.5kgmを発生した。ミッションはオーバードライブ付き3速コラムMTで、最高速140km/hと、かなりの性能向上を果たしている。
さらに当時の金額で7万円のエキストラコストを払えば、日本の乗用車としては初めて採用された自動変速機「トヨグライド」付きモデルを購入することも可能だった。3要素2相型トルクコンバータにロー及びリバース用のプラネタリー式ギアボックスを組み合わせた設計である。
ステアリングコラムにはコントロールレバーがあり、R、L、D、N、Pの5ポジションが示されている。平坦な舗装路ではD(ドライブ)、坂路やフルロード(定員乗車)の場合にはL(ロー)を選択した。
トヨグライドは、トルコン付きの運転の容易さが、ルーミィな6人乗りファミリーサルーンの実用性をさらに高いものにしていた。レバーをセットすると、アクセラレーターを踏まなくてもクルマは僅かに前進する(専門家はクリープという言葉も使う)。混んだ市中でクルマが行列して少しずつ進む場合などは、ブレーキから足を放すだけで前進するので便利である。
Lからのスタートは比較的急速で、50km/hあたりまで踏み込めばたいていの交通の流れを後にすることができたという。Lの絶対的なマキシマムは約65km/hだった。
DからのスタートはLに較べるとはるかに緩慢とのこと。実測値で0から50km/hに達するまでの時間は、Lの6.2秒に対し、Dでは8.8秒を要した。それでも一度、30km/hに達した後のDレンジでのスロットルレスポンスは比較的鋭敏だった。
快適な乗り心地を演出するダブルウイッシュボーン式フロントサス
トヨペット・クラウンのボディは、サイド・フレーム、クロス・メンバーともに閉断面(ボックス型)で、特に捻れに対しては非常に強度をもっており、かつ薄板を用いることにより重量軽減に努めている。メインボディより前方張り出し部サイド・フレームは、板厚を増している。
フロントサスペンションは、本邦最初の独立懸架方式(ニー・アクション)を採用、いわゆるダブルウイッシュボーン・コイルスプリング式である。
いうまでもなく、この方式は、道路の凸凹によるバウンド、路面衝撃を、左右両輪の独立した屈伸運動によって吸収するので、乗り心地は極めて快適であり乗用車には不可欠の機構でもある。最前部には横振れを防ぐトーションバー式のスタビライザーがある。
なお、初期のコイルスプリング式ダブルウイッシュボーン式サスペンションは、いわゆるキングピン式を採用していたが、58年10月に発売されたクラウン・デラックスで上下にボールジョイントを用いたダブルウイッシュボーン式に改良された。
後輪には、新設計の3枚リーフ・スプリング式リジッド・アクスルを採用している。このスプリングは東大生研が開発した理論を製品化したものだ。スプリング長や幅が大きく、鋼板も厚いもので枚数を少なくしてあるので、軽量、柔軟なうえに、バネ間の摩擦が少なく、充分な耐久性がある。
テンション・シャックルの両端はゴム・ブッシュを採用し、メンテナンス・フリーを図る。ショックアブソーバーとしては、横揺れ防止も兼ねて八の字型に、油圧式ダンパーが取り付けられている。