16代目クラウンの誕生を機に、各世代のカリスマ性を彩ってきた「はじめて」をあらためて紐解く特別連載企画。第1回は、1955年に誕生した初代「RS/RSD型」をご紹介しよう。日本初のダブルウイッシュボーン式サスペンションや、自動変速装置トヨグライドを採用した革新的モデルである。トヨタ博物館所蔵の車両による撮りおろし画像も、じっくり楽しんで欲しい。(Motor Magazine Mook 「TOYOTA CROWN 13th」より抜粋)

ご当時インプレダイジェスト──58年式デラックス(マイナーチェンジ車)

試乗したトヨペット・クラウン デラックスに搭載される4気筒OHV、1453ccのスクェア・エンジンは、今度圧縮比を8.0対1に上げて、出力も58ps/4000rpmになった。エンジンの機構的ノイズは極めて低く、エキゾーストノートも、今回マフラーが2段に附けられたために、フルスロットルにしても、気になるほど高くはない。

画像: RS20型 クラウン・デラックス スタンダード。58年のマイナーチェンジでグリル、テールランプ、サイドモール、ダッシュボードなどの意匠変更を受けた。フォグランプやボンネットのマスコットはDXのものを装着。

RS20型 クラウン・デラックス スタンダード。58年のマイナーチェンジでグリル、テールランプ、サイドモール、ダッシュボードなどの意匠変更を受けた。フォグランプやボンネットのマスコットはDXのものを装着。

座席に座った第1印象は、1.5Lの車としては、異例に広々していることである。前後席共、3人並んで比較的楽に腰掛けることができるが、やはり長距離の快適なドライブは、大人4人または大人2人、小人3人というところであろう。

後席の居住性にも、前席と同様、あるいはそれ以上の考慮が払われているのがクラウンの特徴で、前席をいっぱいに下げても、後席のレッグ・ルームは十分である。

比較的高い座席からの視野は、前後方共申し分なく、油圧操作のクラッチ、ブレーキペダルは、ハイヒールでも容易に踏めるほど軽い。全てのコントロールは軽く楽で、素人にも親しみ易く考慮が払われている。

ボックスセクションフレームを持ったクラウンは、どんな悪路を強行突破しても、全く不安を与えない。ロードクリアランスは210㎜もあるので、先ず、大抵の悪路は心配ない。

画像: 55年式 RS(トヨタ博物館 所蔵)。前後ともベンチシートを採用したことで、乗車定員は6名だった。

55年式 RS(トヨタ博物館 所蔵)。前後ともベンチシートを採用したことで、乗車定員は6名だった。

ただし加速性能はいささか失望すべきものであった。元来、非常に重い車で(車重1250kg、3人乗ってガソリンがフルに近く、その上、低オクタンガソリンを使ったというハンディキャップはあったにしても、この数字は現代の1.5Lセダンとしては自慢できない。

ブレーキは、クラウンの自慢できる点の一つである。効きはすこぶる強力で、かなり荒く使ったにもかかわらず、最後まで効力にも、ペダルの踏みしろにも、変化は認められなかった。 

一言にしていえば、クラウン・デラックスは、現在の日本の国情に最も即した実用車である。広い6人乗りの客室、快適な乗り心地、扱いやすい操縦装置、堅牢無比なサスペンション、それに他車の追随を許さないデラックスなアクセサリーを備えたこの車は、初心者にも安心して勧められる豪華版中型車だ。(モーターマガジン1958年12月号より抜粋/文:小林彰太郎)

編集部註:掲載本文は1958年~1961年のモーターマガジン誌から抜粋しています。技術的表現などは、当時の表記を優先しています。画像の一部(トヨタ博物館所蔵の2台)は、写真:早川俊昭。

■トヨペット・クラウン DX(デラックス) オーバードライブ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4365×1695×1540mm
●ホイールベース:2530mm
●車両重量:1250kg
●エンジン:直4OHV
●総排気量:1453cc
●最高出力:58ps/4400rpm
●最大トルク:11.0kgm/2800rpm
●トランスミッション:3速MT+OD
●駆動方式:FR
●当時の車両価格(税込):110万円

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