フルモデルチェンジされたトヨタ「GR86」を、長年マツダ「ロードスター」を愛車としてきたモータ―ジャーナリストの鈴木ケンイチ氏がチェックしてみた。彼には「GR86」は、どんなクルマに見えたのだろうか?

大きくて広々としており、実用性の高さは別次元

GR86と、長年愛車にしてきたロードスターを比較するとなれば、まず最初に挙げるべき違いは、そのサイズだ。

全長4265×全幅1775×全高1310mmのGR86に対して、ロードスターは全長3915×全幅1735×全高1235mm。全長では350mm、全幅で40mm、そして室内幅でもGR86が55mmも大きいのだ。しかも、GR86はプラス2に近いが後席を備えるから、完全なる2シーターのロードスターとは、室内空間の広さは圧倒的に違う。

画像: 先代の86(最終型)と比べると、全長は25mm長く、全幅は同じ、全高は10mm低い。ホイールベースも5mm長くなった。

先代の86(最終型)と比べると、全長は25mm長く、全幅は同じ、全高は10mm低い。ホイールベースも5mm長くなった。

さらに、GR86は後席のシートバックを倒すことで、トランクスルーとなる。タイヤ1セット(4本)が積めるのがGR86のウリだ。この大きな積載量、つまり実用性の高さは、GR86の大きな魅力だ。正直、ロードスターのオーナーとしては「羨ましい!」としか言いようがない。

デザインという面では、GR86とロードスターは、まったく異なる個性を持つ。

GR86の顔つきは、いかにもトヨタらしいものであるのに対して、ロードスターのエクステリア&インテリアは、マツダの「魂動デザイン」そのもの。GR86のデザインはオーソドックスで、少々そっけない。インテリアも武骨と言っていいだろう。もっともこれは、どちらが良いとか悪いということではなく、ユーザーの好みで選ぶべきだろう。

とはいえ、GR86はフルモデルチェンジで先代よりもグラマラスなスタイリングになっており、より北米市場を向いたように思える。兄貴分となるGRスープラと類似性を感じるのも、新型の特徴といえるのではないだろうか。

2.4L化したエンジンの与える大きな影響

さて、GR86を試乗してみて強く感じたのは、エンジン排気量の拡大が生み出した変化の大きさだ。今回のフルモデルチェンジにあたり、スバル由来の水平対向エンジンは排気量を2Lから2.4Lに拡大している。これにより最高出力は先代の200/207psから235psに、最大トルクは205/212Nmから250Nmへと向上している。

画像: 先代の2Lから2.4Lに排気量をアップされたスバル由来の水平対向4気筒エンジン。トランスミッションは6速ATも設定。

先代の2Lから2.4Lに排気量をアップされたスバル由来の水平対向4気筒エンジン。トランスミッションは6速ATも設定。

そして注目すべき点は、最大トルクの発生回転数が、先代の6400~6800rpmから3700rpmへとなったことだ。端的に言えば、新しい2.4Lエンジンは、アクセルを少し踏みこむだけで、すぐに最大トルクを使うことができ、GR86の走り味に劇的な変化を与えている。とにかく低速域からトルクフルなのだ。

高速道路を巡行しているときに、右足のつま先に少し力を入れるだけ、ほんのわずかにアクセルにかける力を増すだけで、GR86はグイ!とばかりに増速する。高速道路を走るGR86は、まさに水を得た魚のように生き生きとしている。

これは最高出力132ps/最大トルク152Nmしかない1.5Lエンジンのロードスターでは、望むべくもない世界だ。高速道路での動力性能では、ロードスターはまったく太刀打ちはできない。

This article is a sponsored article by
''.