1980年代、ホンダはシビックなどでFF路線を強く押し出してきていた。それはファミリーカー路線でもあったわけだが、一方でスポーツ路線もホンダらしさ。でもFFでは無理という諦めにもにたファンの声もあった中、1983年に登場したバラードスポーツCR-Xは、FFのままスポーツカーを成立させてクルマ好きの度肝を抜いた。連載第2回。(2022年9月29日発売・GTメモリーズ「AF/AS バラードスポーツCR-Xより抜粋)

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100ccアップだけでない。DOHC 16バルブパワーが炸裂

画像1: 100ccアップだけでない。DOHC 16バルブパワーが炸裂

バラードスポーツCR-X(以下、CR-X)に1.6L直4 DOHC16バルブエンジンを搭載したSiが設定されたのは1984(昭和58)年11月のことだ。これまで1.5iに搭載されたEW型1.5L直4 SOHCエンジン搭載車の車両型式はAFだが、ここでASとなり事実上のフルモデルチェンジとも言えるものだった。新エンジンはZC型と名付けられた。

当時ホンダが参戦していた世界最高峰の自動車レースであるF1で培った、独自のエンジン技術をもとに開発したと喧伝された。事実、その構造は異例とも言えるもので市販乗用車初のバルブ内側支点スイングアーム方式のシリンダーヘッドを採用しているのが最大の特徴だ。

コンベンショナルなバルブ直動式カムよりも部品点数は増えるが、バルブリフト量やヘッドのコンパクト化には適している。これで吸排気効率を大幅にアップさせて、高回転、高出力化を実現させた。小型軽量のアルミシリンダーブロックを採用するなどの軽量化を図り、高性能と小型軽量化を両立している。

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駆動系では登場時には5速MTの他、ロックアップ機構付ホンダマチック3速フルオートマチックを採用している。これは1985(昭和60)年のマイナーチェンジでは1.5iとともに4速ATに改められた。

加えて1.5iとの相違点としては、新設計の等長ドライブシャフトの採用がある。これまでのドライブシャフトは不等長で、アクセルのオン/オフに際してトルクステアが発生しやすかった。とくにパワーが大きくなると顕著に現れる。そのため、よりハイパワーなエンジンを搭載したSiでは、等長に改めパワーを路面に均一に伝え、発進時やコーナリング時の安定性をさらに高め、スポーティな走りを可能としている。

エクステリアは基本的に1.5iと同一だが、DOHCの力強い走りを印象付け、空力的にも優れたデザインのパワーバルジ付ボンネットの採用が目立つ。リアには高速走行時、後輪にダウンフォースを与え接地性を高めるスポイラーを装備した。

インテリアは、このマイナーチェンジで1.5iを含めてステアリングホイールの意匠変更が行われた。Siのみの装備では、ハードな走りでも、すぐれたホールド性が得られるサイドサポートアジャスター付ドライバーズシートがある。このSiの登場によって、初代CR-XのFFコンパクトスポーツカーという位置づけが決定的になったといえる。

ホンダ バラードスポーツ CR-X Si 主要諸元

●全長×全幅×全高:3675×1625×1290mm
●ホイールベース:2200mm
●車両重量:860kg
●エンジン:直4 DOHC16バルブ
●排気量:1590cc
●最高出力:135ps/6500rpm(グロス)
●最大トルク:15.5kgm/5000rpm(グロス)
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:FF
●車両価格:150万3000円 ※1984年当時

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