扱いやすさと力強さを両立させるために、タイヤも専用開発
アグレッシブな変化が求められる一方で、「クラウンらしさ」も大切にしなければならない。クロスオーバースタイルでありながらも、独立したトランクを採用したのはそうしたこだわりのひとつだ。さらに開発陣は、「取り回しのしやすさ」にも妥協しなかった。
それが225/45R21という、ちょっとユニークなタイヤサイズのチョイスへと結びついている。十分なハンドルの切れ角を確保する(とともにDRSを採用する)ことで新型クラウンもまた、5.4mというクラス随一の小さな回転半径をキープしたのだという。
これまでにないサイズゆえに開発陣は、ミシュランとダンロップにイチから「クラウン専用タイヤ」の開発を依頼した。そのひとつ、ミシュラン「e-PRIMACY(イープライマシー)」では、コンパウンドやリブテクノロジーにはもちろんさまざまな工夫が施されている。加えてトヨタ開発陣がデザイン的に強く求めたのは「サイドから見た時の力強さ」だった。
そのためe-PRIMACYは通常よりもショルダー部がスクエアなプロファイルが与えられている。実車を見ると確かにサイド部が張っていることで、大径感がさらに際立って見えるように思えた。
ちなみにダンロップ版の「SPORTS MAXX 055」も、同じコンセプトと性能を目標に開発された。目指したのは低転がり抵抗による優れた燃費性能と、モーター走行時にもロードノイズが気にならない優れた静粛性、さらにロングライフなど。真円度を高めることで、走行性能そのものの向上にも貢献している。
雑味の少ない自然な接地感。ワインディングでも闊達そのもの
ともすれば大径でプロファイルがスクエアなタイヤは時に、グリップ性能が勝ってしまって快適性や静粛性とのバランスを高めるのが難しい。だが新型クラウンの比較的ナロー系サイズのタイヤは、乗り心地やステアフィールにも良い影響を与えている。
走り出し、モーターで走行する領域で室内に入ってくるタイヤ絡みのノイズは、ロード系もパターン系もほとんど気にならない。剛性感はしっかり保たれているものの、路面の凹凸をうまくいなしているおかげもあって、乗り心地はしっかりコシがありながら十二分に快適だ。
速度を上げて行っても、静粛性が損なわれることはない。とくにステア操作に対する素直な反応と、適度に伝わる接地感がドライビングの安心感につながっている。アンジュレーションが少ない滑らかな舗装路面の緩やかなカーブを曲がる時には、タイヤがまるで地面に吸い付いているかのようで気持ちいい。
ワインディングロードではまた別の顔を見せてくれる。文字どおり、下手なスポーツカーも顔負けの「操る愉しさ」に満ちたドライバーズカーとしての一面だ。ACA制御の恩恵もあって、絶対的なグリップ性能では突出しているとも思えないプレミアムコンフォートタイヤながら、ペースを上げてもアンダーステアを感じさせることはなく、グリップ感も常に安定している。
こうした優れた基本性能の背景にあるのが、クロスオーバー化にともなうもうひとつの必然である「ハイブリッド×4WD」化による、緻密なトラクション制御のメソッドに他ならない。しかも2種類のハイブリッドシステムを設定したことによって、快適性とスポーティ性のバランスを「選ぶ」魅力が加わった。