狙いはずばり「史上最強のハイブリッド」
自動車の環境対応テクノロジーとして一躍主役の座へと躍り出た感のあるハイブリッドシステム。この「若いアイテム」が今やこれほど親しい存在になったのは、ひとえに1997年末に初代プリウスをリリースして以来の、トヨタの弛まぬハイブリッド戦略にあったと言っていいだろう。
それゆえ、この期に及んで「市場」に新規参入しようというメーカーにとっては、存在するハードルの高さに脅威を感じても不思議はない。そんなことを考えさせられたのが、2010年春からの欧米での発売を表明したBMW X6のハイブリッドモデルが狙うキャラクターだ。
それはずばり、「史上最強のハイブリッド」。ガソリンモデルの50iグレードが搭載する最高407psを発する4.4Lのツインターボ付きユニットを一部キャリブレーションを変更しただけで搭載し、そこに67kWと63kWという2モーターと3組の遊星歯車、4つの多板クラッチなどを内蔵したハイブリッドトランスミッションとSBリモーティブ(旧コバシス)製の2kWhニッケル水素バッテリー、日立製作所製のインバーターなどからなるシステムを組み合わせている。結果として、トータルでは485psに780Nmという強烈なシステム出力/トルクを誇る。
当然ながら、発表されたその動力性能も目を見張る。0→100km/h加速は5.6秒。最高速は236km/hに抑えられているが、強化サスペンションなどからなるスポーツパッケージをオプション選択すると、その設定は250km/hにまで引き上げられる。かくして、いかにもBMWらしくまずは走りのパフォーマンスの高さを前面に押し出しているが、231g/kmというCO2排出量ももちろん売り物となる。
そう、このモデルの狙いは「圧倒的な走りのパフォーマンスを犠牲にせずCO2排出量をどこまで切り詰められるか」という点にある。そしてそれは、昨今のBMWが提唱をする『エフィシエント・ダイナミクス』の狙い所とまさにピタリと符号する。
「通常モデル比2倍の低燃費」を旗印に開発された初代プリウスは、その「公約」を達成したカタログ燃費の裏で「走りが貧弱」という評判を受け入れるしかなくなった。が、BMWの場合、それは絶対に許されない。「今の時代にどうして!?」の声が挙がることを承知の上で、まず燃費ではなく走りのパフォーマンスに振った背景には、そういう事情があるというわけだ。