コンパクトモデルにおいても、乗って上質であり快適であることは重要なポイントだ。スポーツイメージをアピールするにしても、そのために何かを犠牲にすることはできない。フォルクスワーゲンで「R」という存在は、いまやトップモデルに位置づけられている。(Motor Magazine2023年1月号より)

信じられないほどの快適さ。そこから生まれる上級感

TロックRで一般道を走り出すと、そのあまりに快適なことに舌を巻かされる。たとえばタウンスピードで市街地を走っていても、タイヤからゴツゴツとしたショックが伝わってくることは滅多になく、サスペンションがスムーズにストロークする様が実感できる。235/40R19という低扁平率タイヤを履いていることが信じられないくらいの、穏やかな乗り心地なのである。

画像: 走りの良さに加え、ロードノイズの静かさはも併せ持つ。

走りの良さに加え、ロードノイズの静かさはも併せ持つ。

そう、乗り心地はフォルクスワーゲンらしく、どっしりとして落ち着きの良さを感じさせるタイプ。さらにいえば、ゴルフ8と違ってタイヤからショックを受けたとき、ボディや足まわりなどに微振動が残らない点も好ましい。

結果として、ゴルフよりもはるかに質感が高く感じられる。ダンパーの動きもしっとりとしていて、
高級感が漂っているように思えた。

ロードノイズが静かなことも、この種のハイパフォーマンスSUVとしては特筆すべきことだ。エンジン音も低く抑えられていて、車内は実に平穏。いや、正直に言えば、高性能モデルとしてはやや物足りなく感じたくらいだ。こうした質感の高さ、優れた快適性に関する印象は高速道路での走行でもまったく変わらなかった。

では、ワインディングロードでのTロックRはどんな表情を見せてくれたのか?その優れた安定感、そしてコーナリングマナーの良さは、軽く流している程度のペースでも十分に感じ取れる。どっしりとした印象の足まわりは、荒れた路面でもボディを安定した姿勢に保つ。

しかもコーナリングフォームが絶妙でイン側が浮き上がるというよりはアウト側が沈み込むロール感覚で、SUVにありがちな腰高感を伴わない。ハンドルに軽く手を添えているだけで何の苦もなくコーナーを駆け抜けていけるのだ。

優れた安定感とマナーの良さ。積極的な走りで本領を発揮

もっとも、これは普通のフォルクスワーゲンではなく、シリーズ中でもっともスポーティなグレードの「R」である。したがって「ここまで刺激感が薄いのも、いかがなものか?」と感じたのも事実だ。

画像: 最高出力300psを発生する2L直列4気筒ターボエンジン。エンジンカバー未装着なのは部品の都合。

最高出力300psを発生する2L直列4気筒ターボエンジン。エンジンカバー未装着なのは部品の都合。

そこで、それまでより少しだけエンジンを引っ張って、5000rpm付近でシフトアップするドライビングに切り替えてみた。すると、どうだろう。それまで押し黙っていたエンジンが、小声ながらも澄み切った美しい歌声を響かせるようになったのだ。

それと同時にエンジンのピックアップも鋭くなり、スポーツドライビングの醍醐味を味わわせてくれるようになった。それでもハンドリングはごく軽いアンダーステアに留まったままで、急激に変化する素振りは見せない。この、どこまでも安定しきった操舵特性こそが、フォルクスワーゲン「R}の真骨頂といっていいだろう。

そういえば、先代のゴルフRヴァリアントがデビューしたおり、私はその国際試乗会に参加したが、やはりサーキット走行ではどう頑張ってもアンダーステアを打ち消せなかったことを思い出す。そしてそのことを居合わせたエンジニアに伝えたところ、彼はこんな風に答えたのである。

「フォルクスワーゲンは、多くのお客さまに選んでいただくクルマを作っています。したがって、い
くらRだからといって、急にオーバーステアに転じるようなハンドリングにはできません」

彼らの「Rスピリット」が、このTロック Rにも受け継がれているのは間違いなさそうだ。文:大谷達也/写真:永元秀和、佐藤正巳、井上雅行)

フォルクスワーゲンTロックR主要諸元

●全長×全幅×全高:4245×1825×1570mm
●ホイールベース:2590mm
●車両重量:1540kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●総排気量:1984cc
●最高出力:221kW(300ps)/5300-6500rpm
●最大トルク:400Nm/2000-5200rpm
●トランスミッション:7速DCT(DSG)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム ・55L
●タイヤサイズ:235/40R19
●車両価格(税込):626万6000円

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