独特のスタイリングは世代によって好みが分かれるかも
BEVとしてのハード面には好印象を得たソルテラから降りて、あらためてクルマをジックリと見る。いわゆるクーペSUV的なスタイリングなので、サイズは比較的コンパクトなのかなと思っていたのだが、実寸はけっこう大きい。全長や全幅は、フォレスターよりわずかに大きいくらいなのだ。
ディテールでは、六角形のフロントグリルやCシェイプに光るランプなど、最近のスバル車に共通のアイデンティティは与えられているが、全体的なデザインは、スバルよりもトヨタのイメージが強いようだ。
また、これも最近のスバル車の新たなアイデンティティなのかもしれないが、前後のフェンダーは無塗装の黒い樹脂製で大きなオーバーフェンダーが与えられている。とくにフロントのフェンダーはヘッドランプやフロントバンパーとも連続したデザインだ。しかも今回の試乗車のようにボディカラーが白だと、コントラストが強すぎるような気がした。
もっともデザインに絶対的な「良い、悪い」などないはず。極論すれば、「好きか、嫌いか」ということにいきつく。今までに何度も紹介しているが、ソルテラのスタイリングには、これが当てはまる。
おそらく世代によっては、近未来的なインパクトに心躍ることだろう。一方でちょっと派手すぎるかな・・・と感じる場合もあるかもしれない。それはある意味、自動車という嗜好性の強い工業製品が抱える、永遠の課題に他ならない。
広がり始めた選択肢。だからこそ「もう一歩」の踏み込みに期待
視界の良いインテリアには、しっかりスバルらしさを感じる。試乗車はヒーター&ベンチレーション内蔵の本革シートをはじめ、インテリアはタンカラーでブルーステッチのアクセントも効いており、なかなかオシャレだ。運転中は外観よりもインテリアを常に目にしているわけだから、ボディカラー同様にインテリアのカラーも重視したい。
それにしても、500〜600万円台のSUVタイプBEVは今、がぜん面白いことになっている。国産、輸入車ともに種類が増える一方で、絶対的なパフォーマンスではかなり拮抗している印象がある。裏返せばこと走りに関しては、どれを選んでも思い切り失望させられることは少ない、ともいえる。
そうなれば選ぶ基準は、とってもシンプルだ。よりカッコいいと思えるエクステリアだったり、より心地よく過ごせるインテリアだったり、使いやすさを実感できる機能性だったり・・・クルマ選びの目線としてはとってもわかりやすく、普遍的になっていく。
こだわりのある自動車ファンからはともすれば「家電的」に思われがちかもしれない。けれど、実はBEVを選ぶのはそうとうワクワクする。そういう時代がいつの間にか、けれど確実に訪れている。裏返せば、本当に価値ある1台にターゲットを絞り込むのは、なかなかに悩ましい。
そう考えていくと、ソルテラはひとつの大きな「強み」を持っている。それが「スバル」というブランドが持つ独特のオーラであることは言うまでもない。トヨタbZ4Xと兄弟車であることは確かなのだけれど、たとえばGR86とは違う個性をBRZがまとっているように、そこにはソルテラならではの価値を訴えかける個性が与えられているはずだ。
あえてそれを「スバルらしさ」と呼ぶのなら、ソルテラにはぜひもう一歩、踏み込んだ表現や味付けを期待したい。なにしろBEVとしての完成度は十二分に高いのだから。だからこそその先に「やっぱりこれだよね!」と思わずほくそえんでしまうようなスパイスをふりかけてもらえれば、ますます「食欲増進」につながることは間違いないのだから。(写真:井上雅行)
スバル ソルテラ ET-HS 主要諸元
●全長×全幅×全高:4690×1860×1650mm
●ホイールベース:2850mm
●車両重量:2030kg
●モーター:交流同期電動機×2
●最高出力:80kW/4535-12500rpm+80kW/4535-12500rpm
●最大トルク:169Nm/0−4535rpm+169Nm/0−4535rpm
●バッテリー総電力量:71.4kWh
●WLTCモード航続距離:487km
●駆動方式:4WD
●タイヤサイズ:235/50R20
●車両価格(税込):682万円