もっとも売れているスバル車フォレスターにも設定
まずはもっとも新しいSTIスポーツグレードとなるフォレスターから報告しよう。日本市場において一番売れているスバル車(22年)であり、それゆえSTIとの親和性があまり高くないことを承知で上位グレードとして設定したということだろう。事実、プライス表を見ても最廉価グレードの+約60万円と、この種の高級グレードとしては驚くほどリーズナブルな設定となっている。
もっともその仕様や装備を詳細に見れば、+60万円で済んだ理由もうなずける。ベースとなったグレードはそれまでの最上級だった「スポーツ」で、前述したようにパワートレーン系の変更はなく、CB18型1.8L水平対向4気筒ターボ+CVT(リニアトロニック)を積んでいる。
内外装の仕様変更やデコレーション追加はさておき、STI絡みでいえば基本、足まわりのダンパー変更がメインだ。それもフロントダンパーを日立アステモ製SFRDダンパーに変更し、リアの減衰特性をそれに併せてチューニングするという極めてシンプルな手法を採った。
その他の要素、たとえばコイルスプリングやスタビライザー、タイヤ&ホイールサイズなどの変更はない。車高(最低地上高)も「スポーツ」と同じ。
これで「STIスポーツ」を名乗っていいのか?とさえ思ってしまうが、ここでまたネーミング法を変えてしまうと元の木阿弥だろう。むしろ「それだけの違い」でいかにフォレスターの乗り味を進化させることができたのか、STIの腕の見せどころというわけである。
案の定、常用域における乗り心地=とくにハイトのあるタイヤを履くSUVが苦手とする舗装路のコンディション変化やオウトツへの対処が明らかに上等になっていた。
加えてオンロードのクルージングフィールがとても滑らかで心地良い。さらにワインディングロードでは適切な踏ん張り感とわかりやすいステアリング応答性を見せた。最上級グレード+60万円弱でこの走りを手に入れることができるのだから、フォレスターを検討する方には迷わずお薦めする。
今後はスバル製SUVのパワートレーンにも電動化を含めた次世代の“力強さ”を期待したい。
WRX S4とレヴォーグでSTIスポーツの本領を知る
「STIスポーツ」の本領は今、おそらくこの2台で確かめるべきだろう。セダンとワゴンの関係にあり、スバルの乗用車イメージを引き上げた世紀のレガシィに相当する2台、WRX S4とレヴォーグである。いずれも渋滞時ハンズオフアシストなど高度化されたアイサイトXを積む最上級グレードのSTIスポーツR EXだ。
STIスポーツ化の手法も共通する。パワートレーンはKA24型2.4L水平対向4気筒ターボ+大容量CVT(スバルパフォーマンストランスミッション)+VTD‐AWDでそれ自体には大きく手を加えない主義であることは前述したとおり。ちなみにレヴォーグにはCB18(+リニアトロニック)を積んだ「STIスポーツ」の設定もある。
注目すべきはやはり足まわりだ。可変ダンピングのZF製電子制御ダンパーを搭載し、ドライブモードセレクトを専用設計とすることで4+1(プライベート設定)の走りのキャラクターを持つに至った。最新の高性能モデルはもはや可変ダンパーなしには成立し得ないというのが持論だから、この点は試乗でもじっくり確認しておきたいところ。
両者に共通する印象も先に記しておこう。まずは今どきのクルマでは嬉しくなるほど「低い」着座位置に懐かしささえ覚えた。WRXに至ってはオプションのレカロシートが奢られていたから余計である。最新のインフォテインメントシステムを搭載する大型のセンターディスプレイを採用しているが、コクピット全体の雰囲気はノスタルジックで、それもまた懐かしいと思う要因だろう。
ゆっくり街中を流すような場面における乗り心地の良さも両STIスポーツの魅力だろう。車格を超えたライドコンフォートを持っている。スバルのコンパクトミドルに500万円級というのは高く感じるかもしれないが、その乗り味そのものは完全にプライスマッチするものだった。