ハイパーカーのパイオニアであるトヨタが一歩リードか
セブリング1000マイルレースの決勝は、3月17日金曜日に行われる。2023年のWECはこのレースを皮切りに11月4日のバーレーン8時間までの全7戦で争われ、シーズンのハイライトとなる第4戦ル・マン24時間は6月10-11日に開催される。
ここ数年のWECでのトヨタの強さは圧倒的で、2018年からル・マン24時間レースを5連覇、4シーズン連続でWECのシリーズチャンピオンを獲得してきた。2021年から導入されたハイパーカー規定でもその強さは揺るぎないものがあった。
しかし、今シーズンは少しばかり様相が違う。これまでハイパーカークラスでのライバルはプジョー、グリッケンハウスのみだったが、今シーズンからポルシェ、フェラーリ、キャデラック、そして、ヴァンウォールが加わり、開幕戦セブリング1000マイルでは計11台のハイパーカーがグリッドに並ぶ。
シリーズ最大のイベントであるル・マン24時間レースでは、さらに多くの台数が参戦することも予想されており、記念すべき100周年を迎える伝統の耐久レース制覇という栄誉をかけた戦いはさらに激しさを増していくことになりそうだ。
そんな中、トヨタは2023年シーズンに向けてアップデートされた新しい仕様の「GR010 ハイブリッド」を発表した。パワーユニットは520kW(707ps)を発揮する3.5Lエンジンと200kW(272ps)を発揮する電気モーターが組み合わされたレーシングハイブリッド。10年以上にわたるル・マン24時間レース参戦で培われてきたノウハウで、ライバルたちの挑戦を待ち受ける。
過酷な戦いを強いる、米国耐久レースの聖地
その進化のポイントはエアロダイナミクスや冷却系における改善に顕著で、軽量化と信頼性の更なる強化も図られている。外観からでも、両前部の左右に新たに配されたダイブプレーン空力デバイスや小型化されたリアウィングのエンドプレート、ヘッドライトのデザインに改善が見受けられる。
レギュレーション変更では、耐久レースにおけるサスティナビリティ向上への取り組みとして、今シーズンから100%生成されたバイオ燃料の使用、タイヤウォーマーの廃止が義務づけられるが、ここでも長期にわたり開発協力を続けてきたパートナー企業の技術的集積が生きてくるはずだ。
ちなみに、トヨタGR010 ハイブリッドには、デンソーのスパークプラグ、アイシン/デンソー共同開発によるフロントモーター、レイズの軽量マグネシウム鍛造ホイール、アケボノのモノブロックブレーキキャリパー、モービルワンの油脂類などが採用されている。
開幕戦が行われるセブリングは米国耐久レースの聖地と言われるが、1950年のオープン以来、荒れた舗装の路面で知られており、とくにこの時期のフロリダは蒸し暑く、8時間以上にわたって戦われる1000マイルレースは、ドライバーにとっても車両にとっても過酷なものとなる。
チーム代表であり7号車のドライバーも務める小林可夢偉は「これだけ多くのマニュファクチャラーがハイパーカークラスに参戦するというのはファンの皆様にとっても素晴らしいことですし、チームとしても新たなライバルの登場に気持ちが高まっています。今シーズンに向けてGR010ハイブリッドに改良を施してきました。これらのアップデートは東富士とドイツ・ケルンのチームメンバー、パートナーやサプライヤーの皆様との強い協力関係により生み出されたもので、関係者全員の尽力に感謝したいと思います。この改良型車両はとても好感触で、ル・マン制覇とWECタイトル防衛に向けた自信を与えてくれるものでした」とコメントしている。