RXらしさを残しながらもまったく新しいデザイン
新興勢力のアルカナに対して、レクサスRXはまさにこのジャンルのパイオニアである。日本ではトヨタ ハリアーとして発売された初代の登場は1997年。22年発売された最新型は、通算5世代目のRXということになる。
ブランドにとって販売の主軸であり、また多くのファンを抱える存在でもあるRXだが、新型は守りに入らず、まさに変革を目指して開発されたという。そんな意欲は外観からして明らかだ。
試乗車はRX450h+"バージョンL"。ボディとグリルをシームレスに続く造形としたスピンドルボディと呼ばれるデザインは、ちゃんとRXに見えて、それでいてしっかり新しい。大きく寝かされたリアウインドウとフローティングタイプのCピラーが織り成すリアの造形は、クーペSUVなんて言葉が生まれる前からのRXのアイデンティティだ。
プロポーションを見ると、4890mmの全長は実は先代と変わらないのだが、ホイールベースは60mm延ばされて、そのぶんリアオーバーハングがスパッと短縮されている。一方でボンネットフードの前端が立てられ、Aピラーが手前に引かれたことで、ノーズの長さも強調された。結果としてサイドビューは前進感がグンと高まっている。
しかも、全幅が先代比25mm 増なのに対してリアトレッドは45mmも拡大されているから、その踏ん張り感は相当なもの。今までなかったほどに﹁走り﹂を予感させるRXになっているのである。
ノブを軽く握るだけで電動でラッチが解除されるe-ラッチの採用によりドアの開閉はスマート。閉まり音も心地良く、まさに良いモノに触れている歓びが得られる。
そうして入った室内は、大型ヘッドアップディスプレイとステアリングスイッチの連動で、運転姿勢のまま各種操作を行えるようにしたことで、スイッチ類の数が減らされ、スッキリとした環境に。先進感ばかりをアピールするのではなく、シンプルな使いやすさを両立させているところが、やはりレクサスというところだ。
後席に座っても好印象は変わらない。前席シートバックの薄肉化やホイールベース延長などによって従来よりも余裕が増している。外観から想像するのとは違ってルーフまわりの圧迫感などもなく、寛いで過ごすことができる。
こんな具合で、価格帯だけでなく狙ったユーザー層も異なるこの2台、内外装デザインやパッケージングには、それぞれの主義主張がしっかりと反映されている。当たり前のことではあるが、スタイリッシュなSUV・・・と簡単に括ってしまうが、表現方法は決してひとつではないのだ。
小排気量ながら、加速感は十二分に力感たっぷり
それは走りに関しても同様である。まずはあらためてアルカナの運転席に陣取り、その世界を味わってみることにする。
パワートレーンは、お馴染みの1.3L直列4気筒ターボエンジンとBSGを組み合わせたもので、トランスミッションは7速DCTとなる。ドライバビリティは良くも悪くもE-TECHハイブリッドのように独特ではなく、発進はターボエンジンの厚みあるトルクにモーターアシストが加わって、とても重厚。右足に力を込めた瞬間に力感が高まる感覚は、クルマを軽快に感じさせる。
E-TECHハイブリッドが使う自然吸気エンジンは、率直に言ってさほどトルキーなわけではないので、一般的にはこちらのマイルドハイブリッドの方が力強い走りと感じられるかもしれない。7速DCTの変速も切れ味鋭く、サウンドも心地よいから、内燃エンジンのクルマに乗る歓びをしっかり実感させてくれるのだ。
フットワークはルノーのクルマらしく、サスペンションがしなやかに動いて路面を捉えて離さない。とは言ってもフワフワしているわけではなく、しっかり中身の詰まったコシのある乗り味である。ギャップを乗り越える時などにタイヤの大きさを意識させられることもあるが、気になるのはそれぐらい。直進性に優れ、それでいてコーナーの連続もまた楽しい。
ハンドルを通して掌に伝わるフィーリングも饒舌で、クルマとの一体感は濃密。アルカナには日産とのアライアンスによって搭載可能となったハイウェイ&トラフィックジャムアシストも標準装備されているが、この走りを味わうと、やはり自らハンドルを握りたくなってしまうのだ。