1960年代末から日本でもスーパーカーが計画され、あるものは試作段階で消え、あるものは実際に販売までこぎつけた。2023年 ゴールデンウイークの特別連載企画として、そんな時代の最先端を目指した日本の志高い、幻のスーパーカーを紹介しよう。第1回は、いすゞ ベレット MX1600だ。

いすゞ ベレット MX1600(ISUZU BELLETT MX1600:1969-1970)

画像: カロッツェリア・ギアによるデザインは当時としては出色のもので、東京モーターショーでは多くの人の注目を集めた。

カロッツェリア・ギアによるデザインは当時としては出色のもので、東京モーターショーでは多くの人の注目を集めた。

現在は乗用車製造から撤退してしまったいすゞだが、かつて1960年代頃はトヨタや日産と並び「自動車業界御三家」と呼ばれたメーカーだった。ベレット117クーペなど、スポーティなラインアップを揃え、パワーユニットもDOHCを設定していた。

そのいすゞが、1969年の第16回 東京モーターショーでお披露目したのが、ここで紹介する「ベレット MX1600」だ。これはいすゞの純レーシングカーであったベレット R6をベースに、イタリアのカロッツェリア・ギアがデザインしたウエッジシェイプのFRP製ボディを架装したものだ。

そのデザインは、当時の国産車の中では出色だった。リトラクタブル式ヘッドランプを採用し、ノーズにはフロントスポイラーが格納され、高速走行時に姿を現すという先進的なデバイスも装備されていた。

コクピットの後ろにミッドシップ搭載されたエンジンは、G161W型と呼ばれるDOHC。これは当時117クーペに搭載されていたものと同じユニットで、総排気量は1.6Lながら10.3の高圧縮比とツインチョーク ソレックスキャブレターを装着して最高出力は120ps、最大トルクは14.5kgmを発生した。

ただ、エンジン冷却や直進安定性の面でまだ課題があったといわれたこともあり、翌1970年の第17回 東京モーターショーに参考出品されたときはエンジン冷却を考え、フロントグリルを設け、また丸形四灯ヘッドランプとするなど、より現実的な姿で登場して市販が期待された。

だが、折悪しく排出ガス規制(マスキー法)などスポーツカー受難の時代に入ったため、その願いは叶えられることはなかった。

画像: ABCペダルは吊り下げ式ではなく下から生えるレーシーなもの。ハンドル左側にパワーウインドーのスイッチも見える。

ABCペダルは吊り下げ式ではなく下から生えるレーシーなもの。ハンドル左側にパワーウインドーのスイッチも見える。

いすゞ ベレット MX1600 主要諸元

●全長×全幅×全高:4100×1650×1100mm
●ホイールベース:2450mm
●エンジン型式:G161W型
●エンジン種類種類:直4 DOHC
●総排気量:1584cc
●最高出力:120ps/7400rpm
●最大トルク:14.5kgm/5000rpm
●トランスミッション:5速MT

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