いすゞ ベレット MX1600(ISUZU BELLETT MX1600:1969-1970)
現在は乗用車製造から撤退してしまったいすゞだが、かつて1960年代頃はトヨタや日産と並び「自動車業界御三家」と呼ばれたメーカーだった。ベレットや117クーペなど、スポーティなラインアップを揃え、パワーユニットもDOHCを設定していた。
そのいすゞが、1969年の第16回 東京モーターショーでお披露目したのが、ここで紹介する「ベレット MX1600」だ。これはいすゞの純レーシングカーであったベレット R6をベースに、イタリアのカロッツェリア・ギアがデザインしたウエッジシェイプのFRP製ボディを架装したものだ。
そのデザインは、当時の国産車の中では出色だった。リトラクタブル式ヘッドランプを採用し、ノーズにはフロントスポイラーが格納され、高速走行時に姿を現すという先進的なデバイスも装備されていた。
コクピットの後ろにミッドシップ搭載されたエンジンは、G161W型と呼ばれるDOHC。これは当時117クーペに搭載されていたものと同じユニットで、総排気量は1.6Lながら10.3の高圧縮比とツインチョーク ソレックスキャブレターを装着して最高出力は120ps、最大トルクは14.5kgmを発生した。
ただ、エンジン冷却や直進安定性の面でまだ課題があったといわれたこともあり、翌1970年の第17回 東京モーターショーに参考出品されたときはエンジン冷却を考え、フロントグリルを設け、また丸形四灯ヘッドランプとするなど、より現実的な姿で登場して市販が期待された。
だが、折悪しく排出ガス規制(マスキー法)などスポーツカー受難の時代に入ったため、その願いは叶えられることはなかった。
いすゞ ベレット MX1600 主要諸元
●全長×全幅×全高:4100×1650×1100mm
●ホイールベース:2450mm
●エンジン型式:G161W型
●エンジン種類種類:直4 DOHC
●総排気量:1584cc
●最高出力:120ps/7400rpm
●最大トルク:14.5kgm/5000rpm
●トランスミッション:5速MT