次世代はBEVになるが当面はICEも併売する
「最新のポルシェが最良のポルシェ」とは、新型ポルシェを表現するときによく使われる言葉である。とは言ってもポルシェの新型モデルに乗ると、「さすがにこれを超えるようなモデルはもう出ないだろう、これこそが最良ポルシェだ」と毎回思ってしまう。
3世代目が日本へ上陸し、試乗したときも、これこそ「最良のカイエン」だと思ったのである。しかし、今回それをさらに超えてくる新型が登場するとは・・・。「最新が最良」はニューカイエンでも実証されたと言えるだろう。
ポルシェAGの発表によると、2022年は30万98844台をグローバルで販売したが、その内の約9万5604台がカイエンだった。対前年比30%増である。つまり一番売れているポルシェ車であり、相変わらず、ポルシェを支える人気モデルである。ちなみに2位はマカンで8万6724台だ。
初代カイエンの登場は02年、そこから20年で累計約125万台を販売している。
そんなカイエンの3世代目の大幅改良モデルの国際試乗会に参加した。その改良範囲はとても広く、自ら「ポルシェ史上最大級の製品アップデート」と謳うほどである。まるでゼロから開発されたようなニューカイエンが誕生したと言えるだろう。
試乗コースは、オーストリア ザルツブルグ空港からチロル地方までの往復とその周辺だが、残念だったのはオフロード試乗が、前日からの天候悪化で会場のスキー場に季節外れの積雪がほどあり走行が叶わなかったことだ。ニューカイエンのオフロード性能は別の機会があれば確認してみたい。
リア周りは、ひと目で従来との違いがわかるように
さて、ニューカイエンのラインナップは、カイエン、カイエンS、カイエンEハイブリッド、カイエンターボGT(日本導入予定なし)となる。このうちカイエンターボGTを除くつのパワートレーン搭載車が試乗に用意されていた。
ちなみにポルシェは、次世代カイエンはBEVになると公表、つまりこの3代目がICE搭載の最後のカイエンとなる。ただしBEVカイエンの登場とともにすぐにICE搭載カイエンが販売されなくなるわけではないという。当面、ICEとBEVのカイエンが併売されるということも今回の取材でわかった。それでもカイエンストーリーはフル電動化へ確実に進んでいる。ICEを選べる機会はそれほど長くないかもしれない。
ところで試乗したカイエンは、E3と呼ばれる3世代目の改良モデルでE3IIと呼ばれる。今回の改良ポイントは、エクステリア&インテリアデザイン、パワートレーン、先進ライト技術、2バルブ技術を採用したアダプティブエアサスペンションなどである。それぞれの詳細をレポートしよう。
まずエクステリアだ。フロントはヘッドライトの形状が変わったことで印象が違って見えるが、それでも紛れもなくひと目でカイエンだとわかるデザインだ。この4ポイント式ヘッドライトはポルシェのアイコンだが、新型はマトリクスLEDヘッドライトを標準、そしてHDマトリクスLEDヘッドライトを新たにオプションとして用意した。
この革新的技術は、各3万2000画素で構成されるヘッドライトが、走行状況に合わせモジュールの明るさや照射範囲を1000段階以上で調整可能にしたという。つまり対向車や前方車両などを避けた照射技術に優れるというものだ。ポルシェのエンジニアは、これを「光のカーペット」と表現していた。
またリアは、テールライトユニットのデザインが大きく変わりひと目で従来との違いがわかるようになった。細長いラインで一直線にボディ左右までテールライトユニットが繋がっている。
ギアセレクターが小型になり助手席用ディスプレイも採用
インテリアに目を移すと、まずはギアセレクターがセンターコンソールから移動していることにすぐ気が付く。タイカンのようにハンドル右側に配置、大きさも小型化された。これによりセンターコンソールのスペースに余裕が生まれ、便利な収納が用意され、高級感あるタッチ式のエアコン操作スイッチが配置された。
ドライバーディスプレイは、カイエン初採用の12.6インチの曲面デザインのディスプレイとなり、中央には12.3インチのPCM(ポルシェコミュニケーションマネジメント)用ディスプレイが配置される。さらにこれもカイエン初採用となる助手席用のディスプレイもオプションで用意された。
サイズは10.9インチだが、特殊なフィルムが貼られ、運転席からは見えないようになっている。これは安全のためで、このディスプレイで動画などを映し出しているときでもドライバーは運転に集中できるようになっている。
ニューカイエンは、2バルブ式ショックアブソーバーを備えたスチールスプリングを標準装備するが、オプションでは、2バルブ式ショックアブソーバーを備えた2チャンバー式アダプティブエアサスペンションを用意する。