レクサス初のBEV専用モデルとして登場したRZは、レクサスならではの走りの味「Lexus Driving Signature」を徹底した作り込みによって進化させた。2035年の100% BEV化へ向けてのファーストステージとして、このRZからレクサスエレクトリックの新時代が始まろうとしている。(Motor Magazine2023年7月号より)

低重心と高剛性ボディによるBEVならでは高い走行性能

バネ下の動きは至ってスムーズでブレや跳ねのようなものは滅多に感じることがない。路面のオウトツに応じてしっとりと歩を合わせていることがクリアに伝わってくる。濁りのない応答感に一助しているのは車体の減衰特性を整えるパフォーマンスダンパーだろうか。

画像: RZほど美しい所作で走るBEVはあまりいない。

RZほど美しい所作で走るBEVはあまりいない。

このあたりのフィーリングはbZ4X/ソルテラと大きく違う。直接のライバルと想定されるのはドイツの3強になるだろうが、近しいグレードのモデルを思い浮かべても低中速域での動的質感は勝るとも劣らずという印象だ。

速度が増すと伝わってくるのは前述の、車体剛性強化への念入りな施しだ。そもそもが強固な建て付けのバッテリーユニットのおかげで低重心化や床面の強化が副産物として現れるBEVでは、むしろ上屋や足まわりの剛性もそれに負けないところまで高めておかなければ、衝撃がヤワなところに集中してしまう。そういったネガを地道に潰していった成果が、多少は大きな入力にもまったく動じずスキッと減衰させるクルマの度量の大きさにつながっている。

前後軸のモーターからなるダイレクト4は理論的に0対100〜100対0の前後駆動配分が可能となるが、発進時や加速時はピッチング姿勢を抑えるべく約60対40〜40対60の間で、旋回入りは約75対25〜50対50と前軸基調で引っ張り、脱出時は約50対50〜20対80と後軸基調で蹴り上げるという制御をシームレスに行うという。

その加速感や旋回感はあくまでリニアで刺々しい着色がない。激しいアクセルペダルのオンオフを試みても、首をもっていかれるほどのドギツイ姿勢は敢えて抑えて、ぐうっと全体を沈み込ませるように操作に反応する。プレミアムのゾーンにはRZより体感的に速いBEVはいくらもあるが、RZZより綺麗な所作で走るBEVVはいくらもないかもしれない。

将来的には自動運転との親和性も高いステアバイワイア

それはコーナリングでも同じで、アクセルペダルのオンオフに伴う上屋のラフな動きは最小限に留められ、パワーをぐんと乗せていってもサスペンションはじんわりと沈み込みながら、底づき感もなくぐっと踏ん張り抜いてくれる。

画像: バッテリー容量は71.4kWhで、50kW出力の急速充電で約60分、90kWの出力では約40分で満充電となる。

バッテリー容量は71.4kWhで、50kW出力の急速充電で約60分、90kWの出力では約40分で満充電となる。

この駆動配分によるボディコントロールがさらに活きるのが、前述のステアバイワイアシステムだ。円形ハンドルと同等の仕事を左右150度の作動量でこなすという。それは、プロトタイプを経験する限り、緻密な駆動配分が旋回姿勢の安定化において少なからぬ貢献を果たしているように感じられた。

キャリブレーションに時間を要しているらしく、今も発売未定だが、将来的には自動運転などとの親和性も高いメカニズムゆえ、この開発で得た経験値は後々アドバンテージとなるはずだ。

RZはBEVにあって、安直な刺激ではなく、自然に綺麗に振る舞うことを由として開発されたクルマだ。その狙いはきちんと達成されていると思う。レクサスは常々動的質感の作り込みにおいて「すっきりと奥深い」というテーマを掲げてきたが、そこに最も近いのはこのクルマかもしれない。

BEVの拓く新世界みたいなところを期待するならステアバイワイア仕様を待つべきだろうが、恒常的ないいもの感でBEVを求めようというのなら、かなり魅力的な選択肢だと思う。(文:渡辺敏史/写真:井上雅行)

レクサスRZ450e“バージョンL”主要諸元

●全長×全幅×全高:4805×1895×1635mm
●ホイールベース:2850mm
●車両重量:2100kg
●モーター:交流同期電動機
●モーター最高出力:前150kW(203.9ps)、後80kW(109ps)
●モーター最大トルク:前266Nm、後169Nm
●バッテリー総電力量:71.4kWh
●WLTCモード航続距離:494km
●駆動方式: 4WD
●タイヤサイズ:前235/50R20、後255/45R20
●車両価格(税込):880万円

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