優れた低燃費性能が、わかりやすく伝わってくる
逆に、このような動力性能のゆとりがクルージングシーンではアクセル開度の減少に繋がり、車載燃費計に目をやるとビックリするような好燃費を叩き出すのが、この1.2TSIポロの特徴でもある。
たとえば、7速のギアポジションでわずかに2200rpmというエンジン回転数で実現する100km/hクルージングのシーンでは、気がつくと21〜22km/Lといった値を当たり前にディスプレイ上に表示していたりする。日本固有の計測法に基づいた、輸入車にとっては決して有利とは言えない10・15モードでのデータが「20.0km/L」というのも凄いが、そうした数値が決して夢物語ではなく、リアルワールドであっさりと実現するのが最新のポロの凄さだ。
動力性能と燃費性能でかくも驚愕もののパワーパックを手に入れた最新ポロが、だからと言って、決してこれのみをセールスポイントとしているわけではもちろんない。
ターボチャージャーや直噴システムなどのハイテクメカをプラスしつつ、ブロック部分だけで14.5kg、トータルでは24.5kgもエンジン重量を低減させ、結果として車両重量全体で20kgのプラスに留めた1.2TSIモデルが実現させた走りの質感は、これまでの1.4Lモデルが備えていた美点をしっかりそのままキープしている。
すなわち、高速時の安定性の高さは「アウトバーン育ち」という例のフレーズを使いたくなるものだし、ステアリングの正確性や常に信頼感に富んだ接地感も特筆レベル。小回り性や静粛性の高さなど、日常シーンでの実用性能の高さもクラスの水準を大きく超えたものというわけだ。
シンプルで素っ気ないが質感がすこぶる高い室内
一方で、口さがない人にかかれば、インテリアのデザインなどは事務机などとも言われかねないシンプルな印象だが、しかしその質感は相変わらず極めて高く、これもまた日本のコンパクトカーなど一蹴する勢いだ。
もっともそんな最新のポロも、やはり完全無欠の1台というわけにはいかない。たとえば比較的低速で路面の大きな凹凸を拾った際の「ボコ感」や揺すられ感は、リアに4リンク式サスペンションを用いる兄貴分のゴルフには差を付けられているし、せっかくダイレクトな伝達感が売り物の7速DSGを備えるならば、シフトパドルが欲しいといった注文もあったりする。
変速動作そのものはスムーズなDSGがクリープ進行時には軽く身震いをするような微振動を伴ったりする点も、トルコンAT車に対する小さなビハインドと取り上げても良いかも知れない。いずれも些細と言えば些細なポイントではあるわけだが。
それにしても、そんな様々な話題を踏まえつつも最終的に心の底から感心できるのは、「ポロというクルマには操る楽しさが満ち溢れている」ということだ。
アクセルペダルを軽く踏み加えた際に、間髪を置かずスッと前に出るリニアな動きの感触。路面とタイヤが常にしっかりと食いつき、ステアリング操作に対してドライバーに余計な動きも物足りなさも感じさせない自然さなどが、そんなテイストを醸し出している。
そんなことは当たり前と思われるかも知れないが、排出ガス浄化という足かせを履かされ、安全アイテムの装着を強要され、そして今度はCO2削減を命題とした燃費性能の大幅向上を求められるといった様々なタスクが課せられた現代のモデルには、そんな「当たり前」の感覚がなおざりになっているものが少なくない。
たとえば、まるで「ゴムひもが伸び縮みする」かのように加減速フィールを生み出すCVT車しか知らない人がこのモデルに乗ったとすれば、そこでは、どこまでも自然で軽快なこのモデルの走りのテイストにきっと憑き物がいくつも落ちたかのようなフレッシュな感覚を受けられるはず。
ごくごく当たり前の動きを当たり前にやってのける。最新のポロとは、実はそんな走りの感覚がとても気分の良い1台でもあるのだ。(文:河村康彦)
フォルクスワーゲン ポロ TSI ハイライン 主要諸元
●全長×全幅×全高:3995×1685×1475mm
●ホイールベース:2470mm
●車両重量:1100kg
●エンジン:直4SOHCターボ
●排気量:1197cc
●最高出力:77kW(105ps)/5000rpm
●最大トルク:175Nm/1500-4100rpm
●トランスミッション:7速DCT(DSG)
●駆動方式:FF
●車両価格:242万円(2010年当時)