効率の良さが光るポロの「真打ち」登場
フォルクスワーゲンが推進するダウンサイズコンセプト、ついにここに極まれり。日本上陸となった最新ポロのスペックを目にすると、思わずそんな感慨を禁じ得ない。
全長が4mを切り、全幅も1.7mを下回るという5ナンバーサイズのボディに搭載されるのは、排気量は1197ccで、最高出力をわずかに5000rpmで発するという、気筒当たり2バルブのSOHCエンジン。うっかりすると、まるで「時代を20年以上も遡った」かのように思えるパワーユニットが、しかし実は最先端を行くエコエンジンというのだから、時代は変わったものだとしみじみ思う。
もちろん、このようなデータだけでこのエンジンが秘めたキャラクターを推し量ろうというのは不適切極まりないこと。なぜならば、このエンジンは完全な新開発が行われた最新作。ここに採用されるテクノロジーは、国際的なシンポジウムの場で採り上げられるほど最先端のものが多数含まれる。
同時に、組み合わされるトランスミッションがやはり現存のユニットとして最高レベルの効率を追求したアイテムであることも無視するわけにはいかない。MT同様の伝達効率の高さを誇るデュアルクラッチ式トランスミッションのDSGも、もちろんダウンサイズコンセプトを支える重要な立役者。「このトランスミッションあってこそ、その真価を最大限に発揮できる最新エンジン」といっていいだろう。
新型ポロが日本でリリースされた昨年秋の時点では、「いずれスポーツグレードに搭載して導入の予定」とアナウンスされた1.2TSIエンジン。しかし、いざ蓋を開ければシリーズ中のベーシックバージョンである「コンフォートライン」にも、このエンジン+7速DSGの組み合わせを搭載。日本でも6000台ほどを発売済みという1.4Lエンジン搭載モデルが、発売後わずか半年少々にして旧型になってしまった。
そんなバリエーションの展開方法については、オーナーの立場になれば「憤懣やるかたない」という思いは拭えないものかも知れない。が、それはそれとして、そんな両エンジン搭載モデルをすでにドイツで同時にチェックした経験を持つ身からすれば、「そうなるのも当然」という思いが強いのもまた事実だ。
いずれにしても、この1.2TSIの搭載をもって、ポロは真打ち登場とあいなった。日本での新型ポロは、「これを機にようやく本格発売」と受け取って差し支えないかも知れない。
動力性能のゆとりがむしろ好燃費を生み出す
そんな最新のエンジンを積んだポロ1.2TSIの走りの実力は、まさに「待った甲斐がある」と紹介できるものだった(ちなみに、ハイラインとコンフォートラインにメカニズム的に大きな差はなく、装備の違いと考えてよさそうだ)。
アイドリング状態からスタートの後、アクセルの踏み込みに対する加速感がいささか物足りないという従来の1.4Lモデルでの印象は、こちらのモデルでは微塵も感じられない。と同時に、ひと足先に同じ1.2TSIエンジンを積んで発売されたゴルフの印象と比べてみれば、「全般に軽快感が一枚上手」となるのは、やはりこちらの方が170kgも軽いという点が功を奏していると容易に推測がつく。
エキゾーストマニホールドに直付けをされた、電子制御式ウエイストゲートバルブを備えるIHI製のターボチャージャーによる過給を受け、いかに1550rpmという低回転から最大トルクを発するとはいっても、発進直後はまだ排気エネルギーが乏しいために一瞬の過給の応答遅れは避けられない。そして、そうしたシーンでこそゴルフとの違いは明確。すなわち、そこではポロの動きの方がハッキリ軽快ということだ。
一方、中間加速のシーンでは、限られたエンジントルクの中で何とか活発な加速力を得ようとアクセルワークに応じて忙しく変速動作を繰り返す1.4Lモデルに比べると、こちら1.2TSIモデルの方がそうしたシフトビジー感が抑えられる分、よりゆとりある動力性能の演出に繋がっているという実感もある。
ちなみに、0→100km/h加速タイムは11.9秒に対して9.7秒と、1.2TSIモデルが軽く2割以上もの俊足ぶりをアピールする。実際、そうした「余裕2割増し」の印象は、日常シーンでもたびたび感じられる。