チャージ中にも気持ちよさが持続すると、なお良し
一方、エンジンと電気モーターの協調制御を最適化するHVレンジでの走りはいかがなものでしょうか?
スポーツRSのシステム最高出力は225kW(306ps)。数値的には、スポーツZ(HEV)の172kW(234ps)とクロスオーバーRSの2.4L デュアルブーストハイブリッド:257kW(349ps)の間に位置します。それはもう、遅いわけなどあるはずがありません。条件さえ許せば、強烈なダッシュ力を発揮してくれます。
もっとも、一般道の速度域では速さよりも、電気モーターとエンジン作動領域のシームレスな「分業」ぶりが好印象でした。意識してラフにアクセルを開けたり閉めたりを繰り返さない限りは、想像以上にエンジンの存在を意識することはなさそうです。
対照的に、CHARGEモードはかなりエンジンの主張が明確になっています。バッテリーの充電を行うためにほぼエンジンがかかった状態になるのですが、ややノイジーでレスポンスもかなりダルに感じられました。
「官能的であれ」とまでは求めません。ただ、もう少し操る楽しさをスポイルしない範囲で、音も含めた感性領域での「心地よさ」を高めてもらえると、さらにスポーツRSらしいエモーショナル感が高まるような気がしました。
自由自在の外部給電など、付加価値も盛りだくさん
試乗後、開発メンバーとの懇談の席で「想定しているライバルは?」と尋ねてみました。返ってきたのは、性能目標的に明確に想定したライバルはいません、というレス。
とはいえ人気沸騰中のSUVカテゴリーの中でも、スタイリッシュかつスポーティなSUVは激戦区となっています。選ぶ側からはそれなりに、シビアな目で見られることは間違いないでしょう。
PHEVに限りませんが、クラウン スポーツという存在が、新機軸てんこ盛りの「新型クラウン」というブランドになおいっそう新鮮な風を吹き込むことは間違いなく、それがどんなふうに受け入れられるのかは、やはり気になるところです。
PHEVならではの実用面でのプラスアルファな才能も活用すれば、そのバリューをさらに実感できることでしょう。普通充電時にエンジンをかけずに室内で過ごせる「マイルームモード」は、日常的に活用できそうだし、アクセサリーコンセントおよび付属のヴィークルコネクターによって、気軽に外部給電できるところも、スポーツRSのマルチタレント性を実感できるはずです。
災害などの非常時にV2H対応も可能。しかもエンジンで発電することによって、最大でおよそ6.5日分(一般家庭が日常使用する電気量から想定)の電力が供給できます。
ちなみに冒頭の議論の際、ひとりのスタッフが最近、知己のポルシェ マカンオーナーの意外な変心に驚かされた、と語っていました。通勤時に前を通るガレージからある日、カッコいいポルシェが姿を消していたのだそうです。
オーナーに消息を尋ねたところ、買い替えたので新しいクルマの納車を待っているのだとか。はい、なにを隠そうそれこそがクラウン スポーツなのでした。
RSかどうかは定かではありませんが・・・なるほど、選ぶ側からすればクラウン スポーツの「立ち位置」はやはり「そのあたり」にあるようです。(写真:伊藤嘉啓)
クラウン スポーツ RS 主要諸元
●全長×全幅×全高:4720×1880×1570mm
●ホイールベース:2770mm
●車両重量:2030kg
●エンジン:直4 DOHCターボ+モーター×2
●総排気量:2487cc
●最高出力:130kW(177ps)/6000rpm
●最大トルク:219Nm(22.3kgm)/3600rpm
●モーター最高出力 前+後:134kW(182ps)+40kW(54ps)
●モーター最大トルク 前+後:270Nm(27.5kgm)+121Nm(12.3kgm)
●トランスミッション:電気式無段変速機
●駆動方式:フロント横置き4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・55L
●WLTCモード燃費:20.3km/L
●タイヤサイズ:235/45R21
●車両価格(税込):765万円