新しい時代のクラウンだと強く感じさせる快適性と走り
そんなRSの走り出しの印象は、2トン超という車両重量が信じられないほどに軽快だ。モーター出力にゆとりがあるのでアクセルペダルを深く踏み込んでもエンジンは簡単には始動せず、その振る舞いはピュアなEVのそれに準じてどこまでも静かでスムーズ。
大きなテールゲートを備えたモデルにありがちな低周波のドラミングノイズも皆無で、ファットで巨大なタイヤを履くゆえに覚悟をしていたロードノイズも想像よりずっと軽度だ。
荒れた路面にさしかかるとさすがにバネ下の重さを多少感じるが、ボディサイズや重量スペックから連想されるよりも身のこなしは総じて軽やかで、たとえスポーツモードを選択しても上質な乗り味をキープしながら連続するコーナーを無駄なボディの動きを伴わずに難なくクリアしていく「クラウンらしいたおやかさとクラウンらしからぬ高いスポーティネスの同居」を感じさせてくれる走りのテイストに「新時代のクラウン」を実感させられる。
それでも「一体これのどこがクラウンなんだ?」という意見を抱く人は現れることだろう。しかし、新しいマーケットで新しい顧客層を開拓しようとなれば、この程度の〝ショック療法〟は必要だったという意見にも納得がいく。
306psというシステム総出力が生み出す絶対的な加速力は「怒涛の加速」といった過激さには至らないものの、スポーツカーの水準と評価できる程度の俊敏さは備えている。ただし、エンジンが加勢を始めたシーンで耳に届くサウンドの質だけは物足りない。
端的に言えば、4気筒らしいちょっと雑味のあるエンジン音は、クラウンスポーツというモデルの車格に追い付いていない、という印象だった。
また、歴代のモデルが日本の道路インフラとともに歩み、ある意味それを築いてきたという実績までを踏まえると、それをかなぐり捨てて一気に巨大化したボディのサイズ(とくに全幅)についても、前述のようにいくら見た目のダイナミズムに貢献していようとも、もろ手を挙げて賛成することはできない思いも生まれてくる。