ポルシェのブランドアイコンでもある911に対してパナメーラとカイエンは明らかに異なる存在だ。しかし、その根底にはポルシェの哲学と血統が確かに受け継がれている。もちろんそれは今回テストドライブした2台の最新モデルからも感じることができる。(文:大谷達也/写真:村西一海 MotorMagazine 2025年1月号より)

どんなカタチでも、ちゃんと「ポルシェ」

「911ではなく、あえてカイエンとパナメーラを選ぶって、どういう意図だろう?」

画像: 「性能ではカイエンGTSクーペが上だが、背の低いパナメーラのほうが好み」と大谷氏。パナメーラの軽快さも好印象とのこと。

「性能ではカイエンGTSクーペが上だが、背の低いパナメーラのほうが好み」と大谷氏。パナメーラの軽快さも好印象とのこと。

このページをご覧になってそう思われた方々にお知らせすると、販売台数でいえばポルシェの主流は911などの2ドアモデルではなく、カイエンやパナメーラのような4(5)ドアモデルなのだ。それも、圧倒的な大差で・・・。

たとえば2023年の統計を見ると、カイエン、マカン、パナメーラ、タイカンの販売台数は合計で約25万台。911と718系の合計は約7万台で、全販売台数のおよそ8割が2ドアではないモデルで占められていることがわかる。

「そりゃ、4ドアのほうがモデル数が多いんだから当然でしょう」と突っ込みたくなる方のために申し上げると、昨年はタイカンとマカンがともに8万7000台ほどを販売したのに対し、911の販売台数は約5万台、718系は約2万台に留まっている。

ちなみに、2ドアモデル以外が販売台数で多数派になったのは、カイエンが発売されてわずか2年目にあたる2003〜2004年の年次会計のことで、この年、911、ボクスター、ケイマンの合計販売台数が4万112台だったのに対して、カイエンはたった1モデルで4万1149台を販売。ポルシェの歴史を塗り変えたのである。

そんなカイエンはどのようにして生まれたのだろうか?

今や人気者に成長したカイエンが、登場した経緯

1992年度に巨額の赤字を計上したポルシェは、その翌年に911に続くモデルとしてボクスターをリリースしたものの、1993年に会長に就任したヴェンデリン・ヴィーデキングは「これだけでは不十分」と判断。「第3のモデル」の検討を開始する。

画像: オプションのライトウエイトスポーツパッケージを選択するとカーボンルーフやセンター出しエキゾーストパイプなどが装備される。

オプションのライトウエイトスポーツパッケージを選択するとカーボンルーフやセンター出しエキゾーストパイプなどが装備される。

ポルシェにとっての最大市場といえばなんといっても北米。そこでヴィーデキングらはアメリカで人気のミニバンかSUVを候補に挙げるが「富裕層に人気なのはSUV」という分析結果からSUVを選択する。

さらに共同開発のパートナーとしてはメルセデス・ベンツが最有力候補だったものの、協力関係の考え方に食い違いがあったためにこの計画は頓挫。かわってパートナーに迎え入れたのが、フェルディナント・ポルシェの孫にあたるフェルディナント・ピエヒが会長を務めていたフォルクスワーゲンだった。

こうして初代カイエンはトゥアレグの兄弟車として開発されることが決定。2002年のパリサロンで発表されるとともに、ポルシェがフォルクスワーゲン・グループに加わるきっかけを作ったのだから、販売面だけでなく経営面でもカイエンはポルシェの歴史を塗り替えたのである。

その後も順調にセールスを伸ばしていったカイエンは2017年に3代目がデビュー。そして23年に3代目として初のマイナーチェンジを受けて、現行型となった。

車両の基本となるプラットフォームにはフォルクスワーゲングループ内のエンジン縦置きレイアウトのSUVに幅広く採用されているMLB evoを投入。パワートレーンはV6やV8のガソリンエンジンをベースにしつつ、モデルによってはプラグインハイブリッドシステムを搭載するが、そのプラグインハイブリッドモデルをトップパフォーマーに設定するあたりに、電動化に対するポルシェの戦略が明確に表れている。

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