ポルシェのブランドアイコンでもある911に対してパナメーラとカイエンは明らかに異なる存在だ。しかし、その根底にはポルシェの哲学と血統が確かに受け継がれている。もちろんそれは今回テストドライブした2台の最新モデルからも感じることができる。(文:大谷達也/写真:村西一海 MotorMagazine 2025年1月号より)

生粋のスポーツカープラットフォームを採用

一方のパナメーラは、911、ボクスター、カイエン、ケイマンに続く「5番目のモデル」として2009年に初代がデビュー。最新型となる3代目はちょうど1年前に発表された。

画像: リアスポイラーは90km/h以上で自動的にせり上がるが、この速度以下でも任意に展開できる。

リアスポイラーは90km/h以上で自動的にせり上がるが、この速度以下でも任意に展開できる。

こちらのプラットフォームはポルシェが中心となって開発したスポーツカー系のMSBを採用。パワートレーンにV6、V8、プラグインハイブリッドなどを用意するのはカイエンと同様ながら、トランスミッションに8速DCT(カイエンはトルコン式の8速AT)を用いたり、ロングホイールベース化で重量配分の適正化を図った点が特徴だ。

ちなみに、今回の試乗車はカイエンGTSクーペがV8、パナメーラ(のスタンダードモデル)がV6とエンジンの形式が異なっているので直接比較はできないものの、前後重量配分はカイエンのフロント56:リア44に対してパナメーラはフロント53:リア47という違いがある。

また、カイエンシリーズのマイナーチェンジとパナメーラのフルモデルチェンジの内容はよく似ていて、端的にいえばエンジンの性能向上、サスペンションの改良(エアサスペンションは3チャンバー式から空気量の可変幅がより大きい2チャンバー式へ。可変ダンパーは1バルブ式から減衰力を伸び側と縮み側で個別に制御できる2バルブ式へ変更)、エクステリアデザインを最新のポルシェデザイン言語に統一、ヒューマンマシンインターフェイスのデジタル化などが中心となっている。

身のこなしにほぼ重さを感じさせないカイエンGTS

まずはカイエンGTSクーペに試乗すると、その乗り心地がさらに上質になったことがすぐに実感できた。ただし、これは乗り心地がソフトになったという意味ではない。

画像: GTSの外観上の特徴として、大型エアインテークを備えた専用フロントバンパーやドアの「GTS」ロゴなどが挙げられる。

GTSの外観上の特徴として、大型エアインテークを備えた専用フロントバンパーやドアの「GTS」ロゴなどが挙げられる。

画像: ダッシュボードはポルシェ共通のデザインテイストだが、センタコンソール両脇のハンドグリップはカイエンだけに備わる。

ダッシュボードはポルシェ共通のデザインテイストだが、センタコンソール両脇のハンドグリップはカイエンだけに備わる。

画像: 4L V8ツインターボエンジンは500ps/660Nmを発生。GTSグレードは従来型比で40ps/40Nmも増強されている。

4L V8ツインターボエンジンは500ps/660Nmを発生。GTSグレードは従来型比で40ps/40Nmも増強されている。

引き締まった足まわりの印象はそのままに、かすかに感じられた大入力時の微振動やダンピングのあいまいな領域がすっかりと消え、ホイールストロークが常に制御されている印象が強まったのだ。

ハンドルから感じられるロードインフォメーションが豊富で、ステアリング系の取り付け剛性が恐ろしく高く感じられるのはポルシェの伝統的な特徴。したがって高速道路だろうとワインディングロードだろうと安心してステアリングホイールを握っていられる。

よくもこれだけ重心の高いSUVで、並みのスポーツカーを凌ぐほどのコーナリング性能を引き出せたものだと感心させられることしきりだった。

エンジンはどの回転域でも十分なトルクとレスポンスを発揮するほか、トップエンドに向けてつき抜けていくようなパワー感も発揮する。パワフルなV8エンジンの実力には圧倒されるばかり。それでいてエンジン音もロードノイズも控え目なところが、カイエンという上質なSUVの資質をさらに高めているように感じた。

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