スバルは変わった・・・だけではなかった
さて、今回の試乗車は1.8LターボエンジンとアイサイトXを搭載した「SPORT EX」。コクピットに移動すると、縦型11.6インチのセンターディスプレイと12.3インチのメーターディスプレイ、そしてハンドルスポークに備え付けられたアイサイトX(渋滞時ハンズオフアシスト機能を含む)のスイッチが、従来モデルにはなかった新しい機能性を主張する。
外観のデザインから内装の機能まで新しさで埋め尽くされているように感じるが、不思議と懐かしさを感じた瞬間がエンジンスタートボタンを押したときだ。

フロントグリルと同様にヘキサゴン形状を取り入れ、水平基調のインストゥルメントパネルを採用する。
エンジンはコンパクトで軽量な第四世代のCB18型(従来フォレスターの後期型からキャリーオーバー)。歴代に採用されてきたEJ型やFB型とはパワーも特性も異なるにもかかわらず、スタータージェネレーターがエンジンを回す音、アイドリング中に感じる横方向への振動、加速時のエンジン音などなど、約20年も前に乗った2代目フォレスターの印象を思い起こすのだ。
もちろん音の大きさや振動の強さは、意識しないと感じられないほど圧倒的に小さい。ここは今回のフルモデルチェンジの目玉とも言える進化の部分で、エンジンルーム内の吸音材を追加したり、インシュレーターの形状変更や増設、CVT防音カバーを拡大するなどNVH(ノイズ/バイブレーション/ハーシュネス)を抑える構造が追加されているのだ。
それでも主要諸元や装備表などの数字・文字だけではわからないフォレスターらしさを味わいたくて、運転しているとついついアクセルペダルを少し踏み込んでしまうのだ。これがとにかく楽しい。1600rpmの低回転域から最大トルク300Nmを発生させる特性や、ペダル操作に対してレスポンス良く、そしてスムーズに加速させてくれるCVTなどパワートレーンの熟成度は高い。

EJ型やFB型よりもロングストローク(80.6×88.0)の傾向となった、CB18型の1.8L水平対向4気筒ターボエンジンだが、高回転域までスムーズに回転する印象が強い。
こうした運転の楽しさは、熟練の機械式4WD機構や操舵にレスポンス良く反応する2ピニオン電動パワーステアリングを採用していることも要因だが、もうひとつ新しいシート構造も起因しているはずだ。
クルマがロールしたとき、またはうねるような路面を通過するとき、車体の揺れによって乗員の頭部も揺さぶられ、これを原因として人は不快感や疲れを感じるのだという。そこで仙骨(骨盤と背骨をつないでいる骨)を安定させるシート形状にすることで、安心感と快適性を高める・・・これは、“仙骨を安定させるシート形状”をはじめて採用した現行クロストレックの試乗会で受けた解説だが、新型のフォレスターにも搭載されているのだ。
ウルトラスエードを組み合わせたシート表皮によるホールド性の高さも相まって、コーナリングでも轍のように荒れた路面でも安心感を高められている。今回の試乗では街中と高速道路での走行にとどまったがワインディングロードに行けば、構造用接着剤の適用拡大(従来8m→新型27m)やフルインナーフレーム構造の採用で高まった動的質感をも楽しめるはずだ。

仙骨を支えるような形状を取り入れたフロントシート。サイドサポートの高さは控えめながら、運転中の体の動きは小さい。
1.8Lターボエンジンを搭載した新型フォレスターの「SPORT」と「SPORT EX」、昔からのフォレスターファンが乗っても懐かしさとともに上質感ある走りで楽しませてくれるモデルに仕上がっている。ちなみに、2.5Lエンジン+モーターによるストロングハイブリッドシステムを搭載したS:HEV系のグレードも用意されているが、納車時期はSPORT系の方が早いようだ。
スバル フォレスターSPORT EX 主要諸元
●全長×全幅×全高:4655×1830×1730mm
●ホイールベース:2670mm
●車両重量:1640kg
●エンジン:対4 DOHC ターボ
●総排気量:1795cc
●エンジン最高出力:130kW(177ps)/5200-5600rpm
●エンジン最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1600-3600rpm
●トランスミッション:CVT(リニアトロニック)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:レギュラー・63L
●WLTCモード燃費:13.6km/L
●タイヤサイズ:225/55R18
●車両価格(税込):419万1000円