人生は自分で運転してこそ輝くもの

親子三代に続く物語であり、その親子を繋ぐもののひとつに、クルマが重要な意味合いを持っていく。クルマというものは単純に移動手段だけのものではなく、そのデザイン、その当時の製作者の思い、流行など、さまざまなものが詰まっている。そして、そこに感化された者には「そのクルマでなければならない」という願いや思い出がある。その変わらない思いは、家族に対する思いも同じなのだと、本作品は語りかけてくる。
手間がかかったり、運転しづらかったり、燃費が悪かったり、それは今回登場するオールドカーのようなマニュアル車が全盛だった時代では、自分が選んだクルマには仕方なくつきまとったもの。またそれは、どれだけ近しい家族との間でも同じようなものだった。理解し合いたいのに分かってくれない。でも最終的には頼りにしてしまう。そんな家族との距離感にも繋がるものがないだろうか。
近い将来には発売されていくであろう自動運転のクルマ。カーナビで選んだ場所に、クルマが勝手に連れて行ってくれるようになるのだろうか。それは確かに便利ではあろう。だが、自分が運転しないで、人生や道中の景色を楽しむことは出来ないのではないだろうか。
自分の人生は自分で選んで進みたい。それでこそ、思い出や幸福は、その人だけのものになるのだから。すべてを自分で操作しなければ動かない愛すべきオールドカーたち。それは、簡単に思いどおりにならないからこそ面白いのだ。それは人生も家族も同じだろう。本作品は、そんなこともちょっとだけ気づかせてくれるに違いない。(文:映画評論家・永田よしのり)

「オールドカー〜てんとう虫のプロポーズ〜」
●監督:あべこうじ
●出演:哀川翔、鈴木砂羽、泉ピン子、西岡徳馬、新原泰佑、暁月みなみ、片山右京、ほか
●配給:レッドビーンズピクチャーズ
●上映時間:88分
●2025年5月23日より池袋シネマ・ロサほか全国順次公開
Ⓒ2024「オールドカー」製作委員会
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