2011年6月、「ツーリング7シーター」として人気のスバル エクシーガに年次改良が施された。フロントグリルのデザインがレガシィに似た横基調デザインに変更され、インテリアの質感向上が図られていた。では実際にハンドルを握り、運転してみてどうだったのか。ここでは登場間もなく行われた国内試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年9月号より)
大きさを感じさせないツーリングワゴン然とした佇まい
2008年登場の「ツーリング7シーター」、スバル エクシーガに年次改良が施された。今回の主な変更点は2つ。フロントグリルのデザインを縦基調から横基調デザインに変更し、ワイド感のある外観になったこと。インテリアでは新たに奥行き感のあるスポーツルミネセントメーターの採用やインパネのソフトフィール塗装で質感を向上したことがポイントとなる。今回試乗したのは、最量販グレードの2.0i-S。FF(2WD)モデルとなる。
エクシーガとは、つくづく不思議な魅力を持ったクルマだとあらためて思う。スペックを見ると全長4740mm、全高1660mmという堂々たる体躯の3列7人乗り「ミニバン」なのだが、見た目にはボディの大きさを感じさせないツーリングワゴン然とした佇まいがある。C/Dピラーをブラックアウト化したデザインの妙がその印象を形成しているのだが、加えて今回、レガシィにも似たフロントグリルデザインに変更されたことで、よりロー&ワイドなスポーティイメージに拍車をかけている。

C/Dピラーをブラックアウト化することで背の高さを感じさせないリアデザインが特徴。ボディカラーのアイスシルバーメタリックは新色。
マルチパーパスカーとして不満のない広さと安定した走り
実際にハンドルを握り、運転してみてもそうだ。水平対向エンジンがもたらす滑らかな回転フィールに低重心が魅力で、横風の強い東京湾アクアラインでも背の高さをまったく感じさせない安定した走りを見せてくれた。ワインディングに移動し、ちょっと意地悪なハンドル操作をしてみてもグラッともせず、滑らかにボディをロールさせコーナーをクリアしていくさまは、とても全高1.6m超のクルマを運転している感覚ではない。車両重量1520kgに対し、搭載エンジンは150ps/191Nmの2L NAだからそれほど余裕はないのだが、しなやかなアスリートの筋肉を思わせるボディの剛性感とともに、高揚感のあるドライビングを提供してくれる。
ただ、「ミニバン」という言葉を用いない弊害もある。たとえば3列目シート。足元は多少窮屈なもののクッションは厚く、大人の使用も前提に作られているのにもかかわらず、そのスタイリッシュワゴンの佇まいのため、室内が狭いイメージを与えるというのだ。そんなことはない、立派にマルチパーパスカーとして不満のない広々とした空間がある。ここは安心していい。
今まではインテリアがカジュアル過ぎ、兄貴分のレガシィシリーズなどから乗り換えると少々残念に感じることがあったのだが、新たに採用されたメーターデザインやインパネ周辺の塗装変更などの効果もあり、コストパフォーマンスも考えると、不満のない質感レベルに向上した。
FFモデルのトランスミッションは全グレードCVTとなる。スバルがリニアトロニックと呼ぶこのCVTは金属チェーン式で、滑り感のないリニアな加速フィールが特徴となるが、最廉価グレードの2.0iを除いた全車にパドルシフトも標準装着した。右手側を引くとシフトアップ、左手側を引くとダウンのパターンで、パドルはコラムに直付けされた「ラテン車式」。6速のマニュアルモード操作が可能で、シフトノブがDレンジの状態でも使用可能。素早い変速レスポンスと相まって、これは積極的に使いたくなる出来栄えだ。
今回の年次変更では、昨年フォレスターに搭載された新世代水平対向エンジン「FB型」の搭載はなく、従来のEJ型エンジンのままなのは少々残念だが、より精悍になり、商品力を高めて登場したエクシーガに今回あらためて乗り、やはり楽しいモデルだと実感した。(文:Motor Magazine編集部)

ベースグレードの2.0iを除く全車にパドルシフトを標準装備。
スバル エクシーガ 2.0i-S 主要諸元
●全長×全幅×全高:4740×1775×1660mm
●ホイールベース:2750mm
●車両重量:1520kg
●エンジン:水平対向4DOHC
●排気量:1994cc
●最高出力:110kW(150ps)/6000rpm
●最大トルク:191Nm(19.5kgm)/3200rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:FF
●車両価格(税込み):212万1000円(2011年当時)