サーキット内を超高速で駆け抜けるF1とは対照的に、岩だらけの未舗装路や雪、砂利、ぬかるみといった極限の環境を戦い抜くのがWRC(世界ラリー選手権)の世界だ。WRCでは、マシンがジャンプで数メートル空を飛び、着地で何百kg、時には1トン以上の衝撃を受ける場面が頻繁に見られる。しかも、それを1日に何十回も繰り返しながら、数百kmのステージを走りきるわけだが、マシンはバラバラにならない。その秘密は、「足回り」「フレーム」「ダンパー」といった耐衝撃構造の徹底した設計と、過酷な実戦で磨かれたノウハウにある。

足回り、フレーム、ダンパーに隠された「壊れない設計」の秘密

ラリーカーにとって最も重要な装備の一つが「足回り」だ。路面が常に変化し続けるWRCでは足回りの強度と柔軟性は極限まで求められる。特にジャンプした後の着地時の衝撃は凄まじく、たとえばラリー・フィンランドの高速ジャンプ区間では、クルマが3~5メートルほどの高さまで浮き、着地時には一瞬で車両重量の何倍もの荷重がサスペンションにかかる。

通常の車であればサスペンションアームが折れるか、ショックアブソーバーが底を突き、フレームに深刻なダメージを与えてしまうだろう。WRCマシンに装着されるダンパーは、一般車の数倍の長大なストロークを持つ。さらに、高圧のオイルやガスを封入し、急激な衝撃を受け流すための多段階の減衰調整機構を備えているのだ。

画像: 空中で車体が傾くこともしばしば。着地の際、荷重が一方に集中する場合も、衝撃を分散する仕組みがある。

空中で車体が傾くこともしばしば。着地の際、荷重が一方に集中する場合も、衝撃を分散する仕組みがある。

現在、トップチームが採用するWRCマシンでは、ReigerやÖhlinsなどの高性能ラリー専用ダンパーが使われている。これらは、内部の複数のピストンとバルブが衝撃の大小に応じて減衰力を瞬時に変化。小さい入力には柔軟に動き、大きな入力には急激に固くなるという、理想的な動作を実現している。

つまり、ジャンプの着地で発生する一瞬の高負荷をスプリングとダンパーで吸収・拡散し、フレームやシャシーに直接ダメージが行かないようになっているのだ。

もう一つ、足回り部品の素材と強度が重要だ。サスペンションアームやナックルといった構成部品は、市販車の鋳造部品とは違い、すべてビレット加工された超高強度アルミニウムやクロモリ鋼で作られている。

これらは、極めて高い剛性を誇り、曲がることはあっても「折れる」ことは滅多にない。これにより、横方向や斜め方向からの予測不能な強い入力に対しても、足回りが踏ん張ってタイヤを路面に捉え続けることができる。

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