サーキット内を超高速で駆け抜けるF1とは対照的に、岩だらけの未舗装路や雪、砂利、ぬかるみといった極限の環境を戦い抜くのがWRC(世界ラリー選手権)の世界だ。WRCでは、マシンがジャンプで数メートル空を飛び、着地で何百kg、時には1トン以上の衝撃を受ける場面が頻繁に見られる。しかも、それを1日に何十回も繰り返しながら、数百kmのステージを走りきるわけだが、マシンはバラバラにならない。その秘密は、「足回り」「フレーム」「ダンパー」といった耐衝撃構造の徹底した設計と、過酷な実戦で磨かれたノウハウにある。

整備でも速さ勝負!耐久性だけでなく、修復可能性も追求

ラリーカーは市販車をベースにしているが、内部はもはや別物だ。車体内部にはロールケージと呼ばれる鉄製の骨組みが緻密に溶接されており、これがキャビン全体を支える強靱なサバイバルセルとなっている。

WRカー(Rally1規定車両)の場合、このロールケージはFIAの規定に沿って車体に溶接され、車が横転してもキャビンが潰れるのを防ぐ。さらに、このケージが車体全体の剛性を劇的に向上させ、ジャンプの衝撃が車体の一部に集中せず、面で分散される設計の核となる。

エンジンマウントやサブフレーム、アンダーボディにも入念な補強が施され、車体全体で衝撃を受け止め、逃がす構造となっているのだ。

WRCマシンのもう一つの重要な特長は、耐久性だけでなく、修復可能性も追求されている点だ。ラリーはサービスパークでの整備時間が厳しく制限されているため、各パーツがユニット化され、すばやく交換できるように設計されている。

たとえば、サスペンションアーム一本を15分以内で交換できるよう、ボルトやナットの位置、アクセス経路までが計算し尽くされている。

画像: さらにWRカーのサスペンションはダブルウィッシュボーンやマクファーソンストラットといった構造をベースに、上下の動きを大きく許容するための特別設計が施されている。

さらにWRカーのサスペンションはダブルウィッシュボーンやマクファーソンストラットといった構造をベースに、上下の動きを大きく許容するための特別設計が施されている。

また、最近ではフレームの一部やサスペンションマウントに破断制御構造を取り入れることもある。これは、大きな衝撃を受けた際に、あえて安価なマウント部などを意図的に壊してエネルギーを逃がし、キャビンやメインフレーム本体への致命的なダメージを防ぐという設計思想だ。

F1のクラッシャブルストラクチャーと似た発想だが、ラリーでは安全性の確保と並行して、その後の修復の迅速性も重視される。

WRCの技術の結晶をラリージャパンで見届けよう

ジャンプしても壊れない理由。それは、一般車とは一線を画す「長大なストロークを持つ高性能ダンパー」「超高強度の足回り部品」「そして車体を面で支える強靭なロールケージ」という、徹底した設計思想と素材選定、そして過酷な環境で磨かれたノウハウの結晶に他ならない。

観客がどよめく大ジャンプの裏側には、ドライバーの勇気だけでなく、「壊れないための知恵と技術」が詰まっているのだ。

今週末、11月6日(木)から9日(日)にかけて、「フォーラムエイト・ラリージャパン2025」が、愛知県と岐阜県の公道で開催される。

日本で開催される世界最高峰の戦いで、世界トップクラスのラリーカーが、私たちの目の前で公道の限界を超えていく姿。そのタフネスとスピードをぜひ現地で体感してほしい。サービスパークのある豊田スタジアムでは、整備の様子やクルマの細部を間近に見る貴重なチャンスもあるだろう。

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