フェラーリ F40(FERRARI F40:1987〜1992)

虚飾を徹底的に廃して走ることだけに特化したようなスタイリングは、ピニンファリーナでも異色といえた。
フェラーリの本拠地であるマラネロで、F40が発表されたのは1987年7月。その車名は今までのフェラーリの流儀とはまったく異なり、フェラーリ創立40周年を記念して製作されたクルマということになる。
F40は、288GTOが開拓したコンセプトを受け継ぎながら、新たなステージを目指したモデルだった。当時のフェラーリ他車同様に、デザインはもちろんピニンファリーナが手がける。とはいえ、前後の大きなカウリングをコンポジット素材のシングルピースとしたシンプルかつ明快な面構成は、それまでのピニンファリーナの女性的なラインとは一線を画すものだ。
低くワイドなフロントエンドからボディサイドにかけて設けられた冷却スロットやインテークダクト、リアにそびえる巨大なリアウイングなど、市販車というよりは競技車両といわれても納得させられてしまうスタイルになっている。そう、F40はまさに「ストックの状態でレースに出場できるクルマ」といえるモデルだったのだ。
室内もスパルタンで、ダッシュボードとセンタートンネルはフェルトが貼ってあるだけ。インテリアトリムは皆無で、初期型のサイドウインドーはスライドパネルが備わるプラスチック製。室内にドアノブはなく、ワイヤーを引いて開けるなど、公道を走るレーシングカー以外のなにものでもないと思わせた。

内装はレーシングカーのそれに最低限のカバー?をした程度。スパルタンさは歴代フェラーリでも屈指のレベルにある。
シャシはフェラーリの伝統に則ったチューブラー(鋼管)スペースフレームで、288GTO用に補強材を追加し、コンポジットパーツを接着剤で貼り付けて剛性アップを図る。とはいえ、基本は1960年代の設計であり、さすがに構造上の古さは隠せなくなってきた。
リアミッドに縦置きされるドライサンプのV8エンジンは、288GTOやその進化版である288GTOエボルツィオーネから引き継ぎ、F40のプロトタイプで開発を進めたもの。総排気量は2936cc。90度V型8気筒 4バルブDOHCの圧縮比を7.7とし、1.1バールで過給する水冷のIHI製ターボチャージャーを2基ドッキングした。点火系と燃料噴射の統合制御にウエーバーとマニエッティ マレリが共同開発したIAWを使うのも、当時のフェラーリの流儀だ。
最高出力は478psに達し、5速MTで後輪のみを駆動する。0→100km/h加速は4.1秒、0→200km/h加速は12.0秒、0→1000m加速は21.0秒と公表されていた。当時の世界最速となる324km/hを公称したF40は、総帥エンツォ・フェラーリが最後にプロデュースした市販フェラーリ車でもあった。価格は4500万円(当時)で、その生産は1992年まで続き、288GTOの5倍以上になる1311台が生産された。

90度V8 DOHC+ツインターボで478ps/58.8kgmというパフォーマンスを発揮。当時世界最速を謳った。
フェラーリ F40 主要諸元
●全長×全幅×全高:4430×1980×1130mm
●ホイールベース:2450mm
●車両重量:1100kg
●エンジン種類:90度V8 DOHCツインターボ
●総排気量:2936cc
●最高出力:478ps/7000rpm
●最大トルク:58.8kgm/4000rpm
●燃料・タンク容量:無鉛プレミアム・120L
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:縦置きミドシップRWD
●タイヤサイズ:前245/40ZR17、後335/35ZR17