モーターマガジンムック「ランサーエボリューションChronicle」が現在モーターマガジン社より発売中だ。ハイパワー4WD車の代表として多くのファンから支持されてきたランサーエボリューション。その変遷を詳細に解説した内容が好評を博している。ここでは、同誌からの抜粋をお届けする。今回は第1期ランサーエボリューションの集大成ともいえるランサーエボリューションⅢについて解説しよう。

迫力のエクステリアと完成度の高さで人気モデルに

画像: 270ps/31.5kgmのパワースペックは掛け値なしにパワフル。特に4G63型エンジンは改良によりフレキシブルな特性になった.

270ps/31.5kgmのパワースペックは掛け値なしにパワフル。特に4G63型エンジンは改良によりフレキシブルな特性になった.

初代ランサーエボリューション登場以来エボリューションⅡまでは、ラリーベース仕様としてグループAのホモロゲーション取得と国内のモータースポーツユーザーを対象としていた面が強かった。しかし、蓋を開けてみるとスポーティなスタイルの4ドアセダンで使い勝手が良く、一般普及仕様のGSRを買って街乗りに使うユーザーもかなりいることがわかった。その傾向を理解した三菱自動車はランサーエボリューションⅢの立ち位置をエボリューションⅡまでと少し変えて、競技ユーザーだけでなく一般ユーザーに乗ってもらうことを意識した。

画像: リアビューも迫力のあるものとなった。サイドからリアまでつながるエアダムも、スタイルを引き締めている。

リアビューも迫力のあるものとなった。サイドからリアまでつながるエアダムも、スタイルを引き締めている。

例えばエボリューションⅢはエクステリアひとつを見ても、確かにグループAホモロゲーションモデルとしての空力性能を考えた面はあるにせよ、過剰なまでのエアロパーツ装備が目立つ。これは一般ユーザー向けの「見た目」を重視した結果であることは否定できない。一般にランサーエボリューションシリーズはエボリューション(Ⅰ)からエボリューションーションⅢまでを第1期と見るがその第1期ランサーエボリューションの完成形といえるのがエボリューションⅢであり、もっとも人気のあるモデルといえる。

画像: エボリューションⅢのエクステリアで一番目立つのはリアウイングだろう。大型なのはもちろんサイドに張り出す形状が迫力だ。

エボリューションⅢのエクステリアで一番目立つのはリアウイングだろう。大型なのはもちろんサイドに張り出す形状が迫力だ。

エボリューションⅢのパワーユニットは、従来と同じく4G63型だが,最高出力は270psとなりエボリューションⅡからさらに10psのアップとなった。これは圧縮比を8.5が9.0までアップしたことやターボのコンプレッサーホイール形状を最適化することにより達成されている。9.0の圧縮比というのは当時のターボ車としてはかなり高い部類である。通常、ターボ車はノッキングを防ぐために圧縮比を低くして過給圧を上げることによってパワーを稼ぐ傾向になるのだがそうするとターボラグが大きくなって扱いづらいエンジン特性となってしまう。エボリューションⅢはエンジン本体の性能の良さを追求した点でも光るクルマとなった。

もうひとつ特筆するポイントがある一般に使用する場合には関係なかったのだが、グループA用のために二次エア導入システムを装備したことだ。二次エア導入システムとは、吸気をバイパスしてエキゾーストマニホールドの排気タービン前に導くことによりアクセルオフ時の負圧を低減し、タービンの回転低下を抑える機構。これによってターボラグを少なくすることができる。

画像: エボリューションⅢでは、圧縮比アップ、タービンコンプレッサーの変更などで、エボリューションⅡからトルクアップを果たした。

エボリューションⅢでは、圧縮比アップ、タービンコンプレッサーの変更などで、エボリューションⅡからトルクアップを果たした。

ただし、このシステムは市販車では作動しないようにしてあった。これに関連してWRCではアンチラグシステムとかミスファイアリングシステムなどとも呼ばれる機構が用いられた。二次エア導入システムは吸気をタービン前に送るだけだが、もっと積極的にタービンを回す機構であり、それを実現するためにあらかじめ準備された機構でもあるわけだ。

駆動系を見てみるとビスカスカップリングをセンターデフに組み込んだフルタイム4WDという点では変更はない。ただ、国内でモータースポーツで使用する場合には、チューナーの駆動系に関するノウハウも蓄積してきて、乗りやすくなったという評判が聞かれるようになった。どのカテゴリーに出場するにしろフロントとリアに多板式LSDは必須だったが、ドライバーの好みに合わせてFR的に乗るのであればリアLSDを強く、FF的に乗るのであればフロントLSDを強めるなどのセッティングが試されるようになっていった。

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