ポルシェ 959(PORSCHE 959:1986〜1989)

1983年のフランクフルトモーターショーで発表された「グルッペB」と呼ばれる4WDのコンセプトモデルをベースとしている。
FIA(国際自動車連盟)は1982年にモータースポーツ参戦競技用車両規定を改定し、改造範囲の広いグループBの導入を発表した。ポルシェはグループB車両の開発にあたり、前規定のグループ4で当時のWRC(世界ラリー選手権)を席巻していたアウディ クワトロを凌駕するには4WDが必須であると考えた。
そこで実績あるタイプ930の911をベースに、トランスミッションからPSK電子制御クラッチを介して前車軸までプロペラシャフトを通し、運転状況に応じて前後のトルク配分を40:60から20:80まで自動調整する可変トルクスプリット式フルタイム4WDシステムを開発した。これは、ステアリングの舵角や車速、加速Gなどを電子制御で検知し、最適な前後トルク配分を行うもので、以降各メーカーのお手本になったといわれている。
加えて、ドライバーが室内からソフト/ミディアム/ハードの3段階に調整できるダンパーや、119〜180mmまでの最低地上高調整機構などを組み合わせて、路面を選ばぬ超絶のロードホールディングの実現も図られた。
こうして1983年のフランクフルト モーターショーでプロトタイプの「グルッペB(ドイツ語のグループB)」が発表され、翌84年にはパリ~ダカールでこれをベースにしたラリーレイド仕様車が総合優勝を飾る。その後1986年にはポルシェ959の名で参戦。その圧倒的な走行性能で総合優勝(1-2フィニッシュ)を決め、それを機に市販されることとなった。

当時のグループCカーである962C用エンジンをベースに、耐久性や扱いやすさを考慮したツインターボを搭載。
911同様、リアオーバーハングに搭載されるエンジンは強制空冷の2.8L フラット6だが、シリンダーヘッドは4バルブDOHC化された。レースなどでの連続高負荷運転に備え、左右の吸気カムシャフトで駆動するウオーターポンプでシリンダーヘッドのみを水冷する、グループCカーの962C譲りの冷却機構を追加した。これに低速時はシングル、4600rpm以上でツインにシーケンシャル制御される2基のKKK製ターボチャージャーを組み合わせ、最高出力450psを叩き出した。
特徴的なロングテール形状のスタイルは300km/hを超す高速度域での安定性を追及して空気抵抗を抑え込んだ結果もたらされたもので、Cd値は0.31を達成。さらにボディはアルミ合金を多用し、フロント部分はガラス繊維で強化したポリウレタンの一体成型。他のパネルにはケブラーやFRPを使うなど、徹底した軽量化が図られ、ベースとなった911と共用のボディパーツはほとんどない。
グループBのホモロゲーション取得のために開発された959は当初200台限定生産の予定だったが、反響が大きく、最終的に292台が生産された。価格は当時のレートで約3600万円だったが、バブル景気で盛り上がっていた日本では、1億円以上ものプライスで取り引きされたこともあったという。

俯瞰してみると、ポルシェが徹底的に空力特性を考えてデザインしたことがわかる。911と共通するパーツはほぼない。
ポルシェ 959 主要諸元
●全長×全幅×全高:4260×1840×1280mm
●ホイールベース:2270mm
●車両重量:1450kg
●エンジン種類:水平対向6 DOHCツインターボ
●総排気量:2850cc
●最高出力:450ps/6500rpm
●最大トルク:51.0kgm/5500rpm
●燃料・タンク容量:無鉛プレミアム・90L
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:リア縦置き4WD
●タイヤサイズ:前235/45VR17、後255/40VR17