マツダ株式会社は10月29日、「ジャパンモビリティショー2025(JMS2025)」のプレスカンファレンスにおいて、2台のビジョンモデル、「MAZDA VISION X-COUPEと「MAZDA VISION X-COMPACT」を世界で初めて公開した。新たなブランドシンボルと共に掲げられた出展テーマは「走る歓びは、地球を笑顔にする」。大気中のCO2を削減できる新技術の実証など、独自の進化はますます加速する。(写真:伊藤嘉啓)

一歩先に踏み出した「走るほどにクリーンになる」技術

もうひとつ、「走るほどに大気中のCO₂を削減できる」究極のサステナビリティと「走る歓び」の両立を目指した技術提案「マツダ モバイル カーボン キャプチャー」の方は、さらに大胆なCO2削減を狙う。それは単なる「ニュートラル(プラスマイナスゼロ)」ではなく、非常に大胆な「カーボンネガティブ(マイナス)」の提案だ。

画像: CO2回収装置のプロトタイプ。黒い部分が真空ポンプ、その奥にある四角い箱に吸着剤を塗布したユニットが収められている。中央のパイプから、CO2を除去した排気が外部に排出される。

CO2回収装置のプロトタイプ。黒い部分が真空ポンプ、その奥にある四角い箱に吸着剤を塗布したユニットが収められている。中央のパイプから、CO2を除去した排気が外部に排出される。

画像: 上の写真を裏側から見たもの。中央のふたがされているパイプがクルマの排気管につながり、たっぷりとCO2を含んだ排気ガスを導入する。

上の写真を裏側から見たもの。中央のふたがされているパイプがクルマの排気管につながり、たっぷりとCO2を含んだ排気ガスを導入する。

JMSでは詳細な技術解説はされていなかったが、最新のマツダ技報にはシステム設計と実験検証に関する論文が掲載されている。

かいつまんで紹介すると、マツダが採用を検証しているのは、ふたつの吸着器にCO₂吸着剤(ゼオライト13Xを使用 )で回収し、弁操作で排気ガス経路を切り替える構造だ。一方の吸着器でCO₂を吸着している間に、もう一方の吸着器では真空ポンプを用いて減圧し、吸着したCO₂を脱離・回収する 。これにより、連続的なCO₂回収が可能となるワケだ。

このシステムでは吸着したCO₂をさらに凝縮除去、集められたより高純度のCO₂を別体のボンベ(内部には微細な孔を多数持つ天然の鉱物、ゼオライトのペレットが封入されている)に貯蔵することを想定している。

プロトタイプは固定式になっているが、実際に車載する場合は、カートリッジ式にして「満タン交換」しやすくする構造になるようだ。実装時の利用状況の想定では、最大200km走行するごとにカートリッジを交換することを考えているそうだ。

実用環境での高い回収率も、すでに確認されている。実車をシャシーダイナモ上で走行させる実験検証を行った結果、エンジンを暖気した上でのWLTCモード走行(実使用環境を想定した走行モード)において、モードトータルで約50%のCO₂を回収できることを確認した という。この時、負荷の低いフェーズではなんと約90%という極めて高い回収率を達成しているというから驚きだ。

実装に当たっては、真空ポンプの稼働に使うエネルギーや吸着器の圧力損失を低減することが必要になるなど、システムが作動する際のエネルギー消費の低減が一つの課題となっているという。また車載しやすくするためのコンパクト化や軽量化も必須だ。

実際、展示されていたプロトタイプの重量は約50kgに達する。今後、ややシンプル化された構造のシステムをスーパー耐久レースのST-Qクラスマシンに搭載して実証実験を行う予定だが、レースシーンでは看過できないハンディになる。実戦を通して、ここでも負荷の少ない小型化、高効率化が進むことになりそうだ。

藻類由来の次世代バイオ燃料もCO2回収の技術も、実用化までの道のりは確かに遠い。それでもマツダが描く、ディーゼルを始めとする内燃機関の未来予想図には、クルマ好きをときめかせる「夢と希望」が確かに息づく。

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