しかし、その根底にはポルシェの哲学と血統が確かに受け継がれている。もちろんそれは今回テストドライブした2台の最新モデルからも感じることができる。(Motor Magazine2025年1月号より 文:大谷達也/写真:村西一海)
今や人気者に成長したカイエンが登場した経緯
1992年度に巨額の赤字を計上したポルシェは、その翌年に911に続くモデルとしてボクスターをリリースしたものの、1993年に会長に就任したヴェンデリン・ヴィーデキングは「これだけでは不十分」と判断。「第3のモデル」の検討を開始する。
ポルシェにとっての最大市場といえばなんといっても北米。そこでヴィーデキングらはアメリカで人気のミニバンかSUVを候補に挙げるが「富裕層に人気なのはSUV」という分析結果からSUVを選択する。さらに共同開発のパートナーとしてはメルセデス・ベンツが最有力候補だったものの、協力関係の考え方に食い違いがあったためにこの計画は頓挫。かわってパートナーに迎え入れたのが、フェルディナント・ポルシェの孫にあたるフェルディナント・ピエヒが会長を務めていたフォルクスワーゲンだった。
こうして初代カイエンはトゥアレグの兄弟車として開発されることが決定。2002年のパリサロンで発表されるとともに、ポルシェがフォルクスワーゲン・グループに加わるきっかけを作ったのだから、販売面だけでなく経営面でもカイエンはポルシェの歴史を塗り替えたのである。
その後も順調にセールスを伸ばしていったカイエンは2017年に3代目がデビュー。そして2023年に3代目として初のマイナーチェンジを受けて、現行型となった。

車両の基本となるプラットフォームにはフォルクスワーゲングループ内のエンジン縦置きレイアウトのSUVに幅広く採用されているMLB evoを投入。パワートレーンはV6やV8のガソリンエンジンをベースにしつつ、モデルによってはプラグインハイブリッドシステムを搭載するが、そのプラグインハイブリッドモデルをトップパフォーマーに設定するあたりに、電動化に対するポルシェの戦略が明確に表れている。
一方のパナメーラは、911、ボクスター、カイエン、ケイマンに続く「5番目のモデル」として2009年に初代がデビュー。最新型となる3代目はちょうど1年前に発表された。
こちらのプラットフォームはポルシェが中心となって開発したスポーツカー系のMSBを採用。パワートレーンにV6、V8、プラグインハイブリッドなどを用意するのはカイエンと同様ながら、トランスミッションに8速DCT(カイエンはトルコン式の8速AT)を用いたり、ロングホイールベース化で重量配分の適正化を図った点が特長だ。

ちなみに、今回の試乗車はカイエンGTSクーペがV8、パナメーラ(のスタンダードモデル)がV6とエンジンの形式が異なっているので直接比較はできないものの、前後重量配分はカイエンのフロント56:リア44に対してパナメーラはフロント53:リア47という違いがある。
また、カイエンシリーズのマイナーチェンジとパナメーラのフルモデルチェンジの内容はよく似ていて、端的にいえばエンジンの性能向上、サスペンションの改良(エアサスペンションは3チャンバー式から空気量の可変幅がより大きい2チャンバー式へ。可変ダンパーは1バルブ式から減衰力を伸び側と縮み側で個別に制御できる2バルブ式へ変更)、エクステリアデザインを最新のポルシェデザイン言語に統一、ヒューマンマシンインターフェイスのデジタル化などが中心となっている。

