トヨタとヤマハ、2社の関係は2000GTの開発からはじまった
トヨタと、オートバイの分野で世界をリードするヤマハ発動機は50年以上の長い年月、深い絆で結ばれている。トヨタがヤマハを技術パートナーとしたのは1964年夏のことだ。
当時のトヨタ 製品企画室 河野二郎氏がリーダーとなってトヨタ2000GTをヤマハと共同開発することになった。エンジンのDOHC化はヤマハが、クルマの製作は両社が共同して行った。その後、トヨタはワークスチームを結成したが、このときもトヨタ7に積む V型8気筒DOHCエンジンの設計と製作をヤマハに依頼している。
ヤマハはオートバイ造りで知られ、モータースポーツにも積極的に挑んでいた。高回転型エンジンのノウハウが豊富で、技術の研鑽にも情熱を燃やしている。だからスポーツカーのような少量生産のプロジェクトには向いていた。高度なエンジン技術によってトヨタの信頼を勝ち取ったヤマハは、その直後からトヨタの量産型DOHCエンジンの開発も手がけるようになる。
その代表が、セリカ1600GTやレビン/トレノに搭載され、名機といわれた1.6Lの2T-G型直列4気筒DOHCだ。その後もトヨタのDOHCエンジンの開発に深く関わり、技術供与も行っている。
1980年代には1G-G型の直列6気筒や4A-G型の直列4気筒も共同開発した。レビンなどに搭載された4A-G型DOHCもヤマハの技術が投入された。前期型は4バルブだが、後期型は5バルブへと進化した。この5バルブ技術もレースの世界で技術を磨いたヤマハによる技術供与といわれている。
トヨタ流に効率を考えると、依頼した方がスマートだ
トヨタに高性能エンジン開発の技術力がないからヤマハに頼んでいると言う人がいるが、それは間違いだ。トヨタは効率を追求する自動車メーカーだから、ものづくりに長けたヤマハに頼んだほうがスムーズに作業が進む。また、ヤマハの有能な人材も活用できるだろうとも考えたのである。提携パートナーに依頼したほうが早いし、開発費も少なくできると判断し、ヤマハと協業体制を整えた。
トヨタはエンジンだけでなく、木目パネル製作などもヤマハ(日本楽器:当時)に依頼した。
21世紀になっても蜜月の関係は続いている。レクサスのスーパースポーツカー、LFAに搭載された精緻なV型10気筒DOHCエンジン、これもヤマハの作品だ。音づくりにこだわるヤマハはエンジン音までも徹底的にチューニングしている。
現在では、レクサス NXやISなどに搭載されている2Lの8AR-FTS型直噴ターボは開発から生産までもヤマハが行っている。