マツダがロードスターRF用に、26psアップした2Lエンジンを新開発
エクステリアはそのままに、ロードスターRFが進化した。進化したのは主にエンジン。ご存知のようにRFはソフトトップと違い2Lエンジンを搭載しているが、そこに手が加えられた。排気量はそのままに、トルクが+5Nmの205Nmに。そして最高出力は158ps→184psに一気にアップしているのだ。最高出力の+26psはスゴイ!
いったい何をやったのか? 実はコレ、エンジン最高回転数を6800→7500rpmへと700rpm引き上げられている。でも、それだけで26psも上がるのかぁ? はい、最高出力はトルクに回転数を掛けた計算で出します。つまり回転数を上げればパワーも上がるというわけ。なんだ、と思うかもしれないが、7000rpmという数字はガソリンエンジンのひとつの分水嶺。これを超えた途端に様々な技術を投入しないとちゃんとエンジンは回ってくれないのだ。
詳しい改良の説明はこの後にして、まず試乗してみよう。試乗会場は伊豆にあるサイクルスポーツセンター。ここはアップダウンの続く自転車用の山岳コースだが、道幅がありクルマの走行にも適している。試乗はATとMTそれぞれの新旧型車を乗り比べる方法で行われた。
まずATの新旧を比べてみる。実は今回、エンジン以外の改良でステアリングにテレスコピックが採用された。これまでチルトのみだったので、体格の大きなドライバーだとステアリングに膝が当たるなどの問題が解消された。ボクのような小柄な人にもかなりベストなポジション。
まず、ATのグレードはVS同士の比較。乗り味はほとんどそのままだが、旧型は3速ギアで2500rpmあたりから加速させると、上り坂ではかなりかったるい。アクセルをガツンと踏み込むとATがシフトダウンしてしまうので、キックダウンしないレベルで比較すると、+5Nmというトルクアップなが
らも新型はこれまでにあった3500rpm前後のトルクの谷がしっかり埋められており、3000rpmを過ぎたあたりから加速力に淀みがなく力強さを感じる。ATはMTに比べて重量が重いので、この差が顕著に感じられるのだ。
ではMTの新旧に試乗してみよう。こちらは旧VS、新RSでの比較試乗。MTは適正ギアに頻繁にシフトしていればATで感じるようなトルクの谷は気にならないが、やはりレブリミットが7500rpmになったことが効いている。しかも、トップエンドでの振動が少なく、無理やり回している感がまった
くないので、気持ち良くレブリミットまで引っ張れる。
とくに2速ギアでのコーナリングがイキイキとするようになった。トランスミッションのギア比も変更はない(ATはファイナルのみ変更)ので、各ギアの守備範囲が広がりコーナリングがより楽しめるようになった。
エンジンサウンドもこだわってチューン
では、エンジンは何が変わったのか? バルブタイミングの高速化とそれに対応したバルブスプリングの張力アップ。吸排気バルブの大径化(排気はハイリフト化も)と、それに伴うスロットルバルブを含めた吸気流路の低抵抗化と大容量化。さらに、ピストンスカートをレーシングエンジンのように短くして1個あたり27g軽量化。これに伴いコンロッドも無駄を省き同41g軽量化。そしてクランクシャフトは材質をより高硬度化し、カウンターウエイトを最適化して高回転化に対応している。
エンジンって、まだまだできることがたくさんあるのだと驚かされるが、マツダ技術陣の飽くなき探求心に敬服する。
もうひとつ、音が進化した。サイレンサー構造を大幅に変更し、ノイズが消え非常にクリアな音質になった。これはRFにとってとても重要で、印象がまるで変わる。女性の声だとセールスの電話の印象が変わるように、新型の排気音は眠っていた脳内活性ホルモンまでほじくるように排出させてくれる。だから、新型に乗り換えた途端に、低速で走っても楽しい。
最後にプリクラッシュブレーキシステムも導入され、年齢を問わず楽しめるモデルに進化したと言えるだろう。(文:松田秀士/写真:玉井 充)