クルマ好きなら一度は憧れたことがあるだろうスーパーカー。その黎明期から現代までをたどる連載企画。第30回は「フェラーリ 288GTO」だ。

フェラーリ 288GTO(1984-1986年)

画像: ヘッドランプはリトラクタブル式だが、バンパー下に4連の角型ドライビングランプを装着している。

ヘッドランプはリトラクタブル式だが、バンパー下に4連の角型ドライビングランプを装着している。

1984年のジュネーブ モーターショーでフェラーリは新たなスポーツカー「288GTO」を発表した。もっとも、発表時の車名は(というよりもフェラーリによる正式名称は)単に「GTO」なのだが、1960年代の名車「250GTO」と区別するために便宜上288GTOと呼ばれており、ここでも288GTOとして紹介する。

その名が示すとおり、288とは2.8Lの8気筒エンジンを搭載していることを意味し、GTOとは「Gran Turismo Omologato(グラン ツーリスモ オモロガート)」の頭文字を繫げたもので、イタリア語でGTレース用の公認(英語のホモロゲーション)を取得したクルマという意味だ。

つまり288GTOは、1982年にFIAが改正した車両規制に則り、グループBで行われる予定のレースに参戦することを目的として、連続する12カ月間に最低200台生産することという規定を満たすために製造されたレーシングモデルだった。

画像: グループCカーのランチアLC2用の3L V8をベースに開発された2.8Lツインターボ。

グループCカーのランチアLC2用の3L V8をベースに開発された2.8Lツインターボ。

スタイリングは308GTBに似ているが、288GTOではV8エンジンは縦置きにミッドシップ搭載されている。ちなみに、288GTOはV8を縦置きミッドシップ搭載し、またツインターボを採用した最初の生産型フェラーリでもあるなど、中身は308GTBとはまったく異なっていた。

重量配分を最適化するためバルクヘッドに触れるほど前寄りに縦置きミッドシップ搭載されたエンジンは、ベルト駆動の90度V8 DOHC32バルブで総排気量は2855cc。圧縮比は7.6で、これに0.8バールで過給する2基のIHI製ターボチャージャーを組み合わせて、最高出力は406psを発生した。

ホイールベースは308GTBより110mm長いが、リアオーバーハングを切りつめて全長を5mm短く収めるなど、ボディスペックも含め、レーシングカーそのものだったといって良い。また、リアのダックテール形状やリアフェンダー後ろの縦型3本ルーバーなどは、前述した往年の名車250GTOをオマージュして用いられたデザイン上の特徴でもある。

288GTOが出場する予定だったレースは、WRCにおけるグループB車両の事故などからグループBが廃止されたため、幻に終わってしまった。だが、288GTOのハイパフォーマンスに対するオファーは殺到し、予定台数を超える272台を販売し、そのテクノロジーは後継モデルたるF40に引き継がれていく。

画像: 308GTBに似てはいるが、ボディ外板に一部新素材を採用し、V8エンジンは縦置きされるなど共通性はほとんどない。

308GTBに似てはいるが、ボディ外板に一部新素材を採用し、V8エンジンは縦置きされるなど共通性はほとんどない。

フェラーリ 288GTO 主要諸元

●全長×全幅×全高:4290×1910×1120mm
●ホイールベース:2450mm
●重量:1160kg
●エンジン種類:90度V8 DOHCツインターボ
●排気量:2855cc
●最高出力:406ps/7000rpm
●最大トルク:50.6kgm/4800rpm
●駆動方式:縦置きミッドシップRWD
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:前225/55VR16、後265/50VR16

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