余裕を謳うラグジュアリーカー向けだった13B
初めての13B型は1973年12月、2代目ルーチェに車種追加されたラグジュアリーグレード「グランツーリスモ」に搭載されてデビューした。1967年のコスモスポーツでスタートしたロータリーエンジンは、単室容積491ccの10A、同573ccの12Aと排気量を拡大して進化してきたが、13Bはさらにローター幅を10mm広げて80mmとして単室容積654ccの排気量を獲得、ロータリー最強のパワーユニットとして世に送り出された。
最高出力は135ps/6500rpm、最大トルクは18.3kgm/4000rpmだ。もっとも、初めて搭載されたのがルーチェということからもわかるように、当時の位置づけはスポーツユニットではなく上級車にふさわしい余裕のある走りを実現するラグジュアリー指向のエンジンだった。
その後、1981年に12Aターボの開発に目途がついたため一時的に姿を消した13Bだったが、1983年10月に4代目ルーチェ/コスモに搭載されて復活した。その名も「13B-SI(スーパーインジェクション)」。このSIシステムは、隣り合うふたつのローターの吸気動脈が180度ずれて作動するのを利用して、その圧力波をチャンバーに導いて隣のローターに送って吸気効率を高める一種の過給効果(マツダはダイナミック過給と呼んだ)を狙ったものだ。ターボやスーパーチャージャーを使った過給ではないが、吸気ポートが急激に閉じるロータリーエンジンの特性を利用することで、特に低速域でのトルク特性を大幅に向上させた。
またドライバビリティの改善には12A型ですでに実用化されていた6PI(6ポートインジェクション)の採用も貢献している。こちらは低速域~中速域~高速域とポートタイミングを段階的に切り替える可変ポートシステムだ。結果的にエンジン出力は12Aターボに比肩する160ps/6000rpm、最大トルクも20.5kgm/3000rpmを実現している。
可変ターボ採用で本格スポーツユニットへ
13Bが本格的なスポーツエンジンとして花開くのは、やはり1985年9月に登場した2代目サバンナRX-7(FC3S型)に搭載された13B-T(ターボ)からである。コスモや初代RX-7(SA22C型)の後期型で登場した12Aターボですでに165ps(コスモ用は160ps)に達していたロータリーターボだったが、その開発過程で得た知見を元に13Bターボでは新たにインタークーラーを装備するとともに、タービン自体に可変ツインスクロール型を採用した。吸気冷却の効果が高いエンジン直上インタークーラーと、A/R0.4~1.0という幅広いダイナミックレンジをもつ可変ターボの特性が相まって、低速トルクを犠牲にすることなく大幅な過給圧アップを達成したのだ。
エンジン本体にも大幅に手が入った。ローターのリブ厚を薄くしておよそ17%近くの軽量化を実現、さらにアペックスシールを従来に2分割から3分割へ、またハウジングにも摩擦を低減する数々の新技術が採用されレスポンスと耐久性の向上を両立した。その結果、最高出力は185ps/6500rpm、最大トルクは25.0kgm/3500rpmを達成。ロータリーエンジン史上最強のスペックを実現したのだ。
この13Bターボを搭載したサバンナRX-7は、そのシャープなフットワークも相まって高い人気を獲得した。またモデルライフを通じて、そのパフォーマンスを向上していったのも特徴で、究極のハンドリングを目指した限定車のアンフィニシリーズは4世代が発売され(発売は8回)、発売されるたびにバージョンアップする姿勢に多くのユーザーが共感を覚えた。
1989年3月のマイナーチェンジ以降(いわゆる後期型)ではターボシステムを大幅に改良。可変ツインスクロールからよりシンプルなツイン・インディペンデント・スクロール(各ローターごとに独立したスクロールからタービンに排出ガスをあてるタイプ)にタービンを改良。エンジン本体にもローター形状の変更などさまざまな改良を加えて低速トルクの増強とレスポンスアップを実現し、最高出力は205ps/6500rpm、最大トルク27.5kgm/3500rpmに向上した。さらに人気の限定車シリーズ=アンフィニではハイオク仕様化と排気系の変更で、215ps/6500rpm、28.0kgm/3500rpmのスペックも実現している。
13B-Tはスポーツユニットとしてのロータリーエンジンのスポーツ性を確立したスポーツユニットであり、その進化は平成に入って登場した新世代RX-7(FD3S)に搭載されたシーケンシャルツインターボの13B-REWに継承されるのだ。