もちろん驚かされたのは、その装いからだけではない。この期に及んで秘める必要などなかった、というよりむしろ秘めきれなかった中身=スポーツパフォーマンスの拠り所にも気持ちを根こそぎ持っていかれた。
アウディ史上最強と謳われるドライサンプ式直噴90度V10DOHC40バルブツインターボTFSIエンジンを搭載。これまたフォーシルバーリングス市販モデル初のオーバー500psスペックとなる580ps/650Nmという、ワゴンモデルにあるまじきパワーソースを手に入れていたからだ。
組み合わされるのは、当然、フルタイム4WDクワトロ+ZF製6速ティプトロニック。通常走行時の前後トルク配分は40:60で、状況に応じて最大、前輪へ65%、後輪へ85%のトルクを配分する。スペックからも、世界最速最強ワゴンの誕生と言っていい。
当然、足まわりやブレーキもそれに見合ったチューニングが施されているわけだが(というか、このクルマの場合、強大なパワーのみならず2トン超の車重に併せたというべきか)、19インチホイール(オプションで20インチも選択可)に包まれた巨大なブレーキシステム(これまたオプションでCCBセラミックカーボンブレーキ選択可)もさることながら、進化したDRC(ダイナミックライドコントロール)にも注目しておきたい。
DRCそのものはそもそもヤマハが開発しアウディに提案した理論(REAS)で、先代RS6で初めて搭載されたもの。対角線上に繋がれたダンパーの油圧フローを機械的に制御することでフラットライドを実現するという非電子的な仕掛けだ。それゆえ極めて人の感性に自然でリニアな安定感が得られるというわけだが、新型RS6には減衰力を3段階で変えられる新システム(オプション)が採用されている。
これだけのパフォーマンスを誇る、もはやマシンと呼ぶべきワゴンの、企画開発そして製造を担当したのはクワトロGmbH。さぞかし「大いなる思い」や「見越した戦略」があったのだろうと開発を担当したエンジニアに質問してみたが、返ってきた答えは「ただただ世界最速の、そしてRSシリーズの名に恥じない最強ワゴンを造ってみたかった」という純粋な想いだけであったようだから、再びの驚きであった。