2007年秋のフランクフルトショーで衝撃的なデビューを飾ったアウディRS6アバント。正式に日本導入決定がアナウンスされる中、2008年初頭、ポルトガルのポールリカールサーキットを舞台に国際試乗会が行われている。Motor Magazine誌ももちろんこの試乗会に参加、そのレポートをお届けしている。今回はその時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年4月号より)

しかし、驚いたのはその過激さにではなく、あくまでも安定した速さにであった。と同時に、あれほど昂っていた気持ちが俄然、冷静になっていることにも驚く。2トンを超えるクルマが200km/hで走っていてもなお、脳味噌がシートに座って運転している自分を冷静に観察しているかのようだ。

パッケージングもさることながら、乗り手の冷静さも手伝ってのことだろう。RS6がサーキットを走って楽しめるようなクルマでないことは、2つめのタイトコーナーですぐに明らかにされる。きっちりフロントヘビー。ひらりひらりと抜けて行くなどという芸当はまるで似合わない。

しかしながら、加減速の最中と高速域での安定感には目を見張るものがあった。スポーツカー風に素晴らしいのではなく、その持てる高性能に対して安心して走らせることができるということに満足できるというわけだ。

そして私は、試乗コースを、高速道路を含む一般道に移してたちまち、RS6の真価を思い知ることになる。

サーキットでは自然と力が入ってしまうからだろうか。それほど苦にならなかったのだが、一般道に出てステアリングフィールの重さには少しだけ参ってしまった。

30km/hを超えるといきなりドシンと重みを増す。V10エンジンの存在を感じるが如くに、だ。

田舎道を抜け高速道路へ。入線から一気に加速、高速でのクルージング、追い越しとレーンチェンジ、連続する高速コーナー、ふいの減速、流出……。想定されるすべての高速シチュエーションにおいて、RS6は見事なまでの安定感を見せつける。その間、ドライバーはあくまでも冷静かつ平穏。余計な気疲れは一切なく、ただただスーパースポーツカー顔負けの高速で巡航する。アバントであることも手伝って、これほど速くて実用的なグランドツーリングカーは他に見当たるまい。

確かにアウディの頂上スポーツラインはここにきてその牙を隠そうとはしなくなった。見るからに情熱的に振る舞おうとしているようにも思える。

しかし、そのパフォーマンスそのものは強力無比であるけれども、決して冷静さを失わないものだ。物理的な情熱に溢れているけれども、精神の余計な疲労を招かないものだ。

真のGTカーとはこうあるべし。アウディはそう静かに熱く語っている。RS6アバントが日本市場に投入されることの意味は大きい。(文:西川淳/Motor Magazine 2008年4月号より)

画像: 580psという凄まじいパフォーマンスを誇るだけに、試乗会ではポールリカールサーキットでの走行も用意されていた。

580psという凄まじいパフォーマンスを誇るだけに、試乗会ではポールリカールサーキットでの走行も用意されていた。

ヒットの法則

アウディRS6アバント 主要諸元

●全長×全幅×全高:4928×1889×1460mm
●ホイールベース:2846mm
●車両重量:2025kg
●エンジン:V10DOHCツインターボ
●排気量:4991cc
●最高出力:580ps/6250-6700rpm
●最大トルク:650Nm/1500-6250rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速AT
●最高速:250km/h (リミッター)
●0-100km/h加速:4.6秒
※欧州仕様

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