延ばされたホイールベースが落ち着いた走りをもたらす
取材に供してもらったMINIクラブマンはとりあえず慣らしもそこそこという状態の6速AT版クーパーSだった。本体価格は331万円。同グレードのMINIに対して23万円高となる。
175psを発揮するBMW製の1.6L直噴ターボは1600rpmから最大トルクを発生する実用性も兼ね備えており、フォルクスワーゲンのシングルチャージャーTSIと並び、現在もっとも効率の高いターボエンジンということができる。
その柔軟なドライバビリティは現行MINIクーパーS比で70kg車重が増えたこのクルマに乗ってもまったく褪せることはない。ATモードで乗っていると、低回転からトントンと高いギアを捕まえながら、実に粘り強く街中での加減速に応えてくれる。瞬間的に260Nmまで発生トルクを高めるスクランブルモードもあるが、その必要をまったく感じさせないというか、そんなものがついていることすら意識させない滑らかさがある。
ちなみにMINIクラブマンの動力性能は0→100km/h加速が7.6秒、最高速が224km/hと発表されており、0→100km/h加速のみ現行MINIクーパーSに対して0.5秒ほど劣るが、これはユーティリティとのトレードを考えれば納得できる範囲だ。ただし世のターボエンジンの常で、サウンドやシャープネスなどの官能性に関してはクーパーのNAユニットに譲るのは仕方のないことだろう。
MINIに比してのMINIクラブマンの最大の違いは乗り心地だ。首都高のように目地段差が続く状況や、路面のアンジュレーションに対してこちらは明らかにアタリが優しい。定則通り重量とホイールベースが好作用しているのだろうが、リア側の突き上げが想像以上に抑えられているところをみると、高ロードを想定したリアサスのチューニングが巧くいっていると思われる。