135iクーペは2ドアセダンのようなパッケージ
さて、135iクーペのブレーキシステムには、BMW久々の対向ピストン型キャリパーが備えられている。ちなみに、その前に採用されたのはE38型の735iMスポーツである。
フロント用キャリパーは対向6ピストン型だが、そのフィーリングは対向ピストン型のデメリットを克服していた。デメリットとは、踏み込んでいったときのストロークの長さだ。ピストンの数が多いと、それだけブレーキ液をたくさん使わないと押すことができない。そのため、踏み始めの反応が弱いとか、さらに踏み増したときにストロークが必要だったりするケースが多い。
しかし135iクーペのブレーキペダルの感触は、まったく問題ない。通常のフローティング型キャリパーよりもブレーキが利き始めるペダル位置が上になるくらいだ。
やはり対向ピストン型キャリパーを採用するケイマンSのブレーキペダルは、少し深く入ったところでブレーキ力をコントロールする感じだ。そして135iクーペに再び乗り換えると、ブレーキペダルを踏んだ瞬間からジワッと利いてきて、ローターとパッドの摩擦している感じがわかる。あくまでも軽く、しっかりと利いてくれる安心感あるブレーキだと感じる。
今回のライバル3車と比べて135iクーペの大きな優位点は、ごく普通に実用車として使えるクルマでありながら、速く走ろうと思えばいくらでも速くなる凄いポテンシャルを持っていることだ。乗り心地がよく、長距離ドライブでも疲れが出にくそうだという点や、後席に2人が楽に座ることができるのも大きなメリットだろう。胴が長いボクが後席に座っても数cmのヘッドクリアランスが取れる。そしてトランク容量も確保されている。
やはりこれは、2002tiのDNAを受け継ぐクルマであり、2ドアクーペと謳いながらも、むしろ2ドアセダンのようなパッケージングになっているからだろう。2002tiのエクステリアにあったフラットデッキのような形状も、リアウインドウの立ち具合も、この135iクーペから読み取ることもできる。やはりここでも「元祖BMW」に戻っているのである。(文:こもだきよし/Motor Magazine 2008年5月号より)
BMW 135iクーペ Mスポーツ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4370×1750×1410mm
●ホイールベース:2660mm
●車両重量:1530kg
●エンジン:直6DOHCツインターボ
●排気量:2979cc
●最高出力:306ps/5800rpm
●最大トルク:400Nm/1300-5000rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:6速MT
●車両価格:538万円(2008年)
ポルシェ ケイマンS 主要諸元
●全長×全幅×全高:4340×1800×1305mm
●ホイールベース:2415mm
●車両重量:1380kg
●エンジン:水平対向6DOHC
●排気量:3387cc
●最高出力:217ps/6250rpm
●最大トルク:340Nm/4400-6000rpm
●駆動方式:MR
●トランスミッション:6速MT
●車両価格:786万円(2008年)
アウディTTクーペ 3.2クワトロ S-line 主要諸元
●全長×全幅×全高:4190×1840×1380mm
●ホイールベース:2465mm
●車両重量:1470kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3188cc
●最高出力:250ps/6300rpm
●最大トルク:320Nm/2500-3000rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速DCT(Sトロニック)
●車両価格:609万円(2008年)
フォルクスワーゲン ゴルフR32 4ドア 主要諸元
●全長×全幅×全高:4250×1760×1505mm
●ホイールベース:2575mm
●車両重量:1590kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3188cc
●最高出力:250ps/6300rpm
●最大トルク:320Nm/2500-3000rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速DCT(DSG)
●車両価格:439万円(2008年)