2008年2月に日本に上陸したBMW135iクーぺ Mスポーツは、1シリーズクーぺの第1弾であると同時に、コンパクトなボディに高性能エンジンを詰め込んだスペシャルモデルでもあった。Motor Magazine誌はその高性能ぶりに着目、ライバルとなるであろうポルシェ ケイマンS、アウディTTクーペ 3.2クワトロ、ゴルフR32と比較しながら試乗を行っている。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年5月号より)

高性能をどう使いこなすか、それぞれに独自の戦略が見える

今回の取材では、135iクーペのライバルと目されるポルシェケイマンSとアウディTTクーペ3.2クワトロS-line、さらにフォルクスワーゲン ゴルフR32 4ドアにも同行してもらった。エンジンはいずれも6気筒だが、135iクーペは直列6気筒、ケイマンSは水平対向6気筒、TTクーぺとゴルフR32は15度狭角V型6気筒である。

135iクーペに乗り込んで最初に走り始めたときに、あっけないほど楽なので拍子抜けしてしまった。実は乗る前はかなりスパルタンなクルマかと勝手に想像していたから、その乗りやすさが意外だったのだ。

でも35年前に乗った2002tiもそうだった。BMWは速いクルマだからといっても乗りにくくはならないのだ。逆に速いクルマだからこそ乗りやすくしている気配も感じられる。

ブレーキペダルとクラッチペダルを踏み込み、左手でエンジンのスタートストップスイッチを押すと簡単にアイドリングを始める。そしてギアを1速に入れてクラッチペダルを戻していくとクルマが動きそうになる。そのままクラッチを戻しても走り出しそうだが、このタイミングでアクセルペダルを少し踏み込んでいく。

これならAT限定免許以外のドライバーなら誰でも運転できそうだ。クラッチがスムーズにつながり、ギアチェンジもシフトストロークは短くはないが、ゲートがはっきりしていてシフトミスがなさそうだ。アクセルペダルが必要以上に過敏な反応をしないからドライバーがコントロールしやすく、結局は運転しやすいという評価になる。

走り始めても、1300rpmから400Nmという最大トルクを発生するエンジンは粘り強く、MT車とは思えないほど高いギアのまま低いスピードで走ることができる。そしてそのままスムーズに加速させることも可能だ。

かなり、ずぼらな運転も許容してくれる。しかしアクセルペダルをグイッと踏み込んでいくと、ターボパワーが炸裂して目が追いつかないほどの加速を味わえる。このときはシフト操作が忙しい。6800rpmからゼブラゾーン、7000rpmからレッドゾーンだが、そのままアクセルペダルを踏み続けていてもレブリミッターが穏やかに作動して回転が頭打ちになるので、エンジンが壊れる心配はない。

ジャジャ馬ではないことがわかったところでワインディングロードを走らせてみると、今度はそのしなやかなサスペンションに驚いた。舗装が悪く荒れているような場所でも、うまく振動を吸収して、非常に良い乗り心地を提供してくれる。335iクーペよりも確実に乗り心地がいい。ランフラットタイヤだからといって、乗り心地が悪くなると判断するのはもう過去のことだ。

カーブが多いワインディングロードでは、アクセルペダルのオンとオフの回数が増える。だがここでもターボのタイムラグはまったく感じられない。NAエンジンよりレスポンスがいいくらいだ。

もう1台のMT車であるケイマンSに乗り換える。ドライビングポジションからして135iクーペとはまったく異なり、アイポイントはかなり低い。そしてシートがかなり硬く、肩までサポートがあるから、まるでレーシングタイプのバケットシートという感じだ。シートのフレームがしっかりしていて、それに貼られているウレタンが薄いから、より硬く感じるのだ。

サスペンション自体も、かなり硬く締め上げられている。路面の不整もそのまま伝えてくるし、コーナリング時のロール角もごく小さく抑えられている。だから、いつでもダイレクトな操舵フィーリングなのだ。それでも硬いシートで身体が動かないから、全体のバランスが取れている。

ケイマンSはシフトレバーの操作感もちょっと重めで、横方向には剛性が高い感じだ。135iクーペよりストロークは短く、明確なゲートが刻まれている。この感触は911と共通する。

135iクーペとケイマンSをイメージで比較すると、乗用車とスポーツカーという違いがありそうだ。ケイマンSのエンジンは3387ccという排気量から最大トルク340Nm/4400~6000rpmを発揮する。ケイマンSのメリットは重心点が低いことと、総重量が軽いことだ。これは2人乗りから来ているが、車両重量は1380kgしかない。135iクーペより170kgも軽いのは、走りにとって大いにアドバンテージを持つ。しかも軽いといってもミッドシップなので、リアの駆動輪には大きな荷重が掛かっているという大きな利点を備える。

画像: ポルシェ ケイマンSは3.6L水平対向6気筒エンジンをミッドに搭載するピュアスポーツカー。

ポルシェ ケイマンSは3.6L水平対向6気筒エンジンをミッドに搭載するピュアスポーツカー。

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