小さなボディに大きなエンジンを押し込んだ135iクーペ
135iクーペがデビューすると聞いたとき「これは元祖BMWの再来だ」と思わず叫んだBMWファンは少なくないと思う。
それは「小さなボディに大きなエンジンを載せて、スポーティに走る」という、とてもシンプルなコンセプトだ。1970年代当時のBMWはこれで走りを強調することに成功し、多くのユーザーに理解された。新しい135iクーペは、その当時のままの手法で登場した印象を受けたのだ。
ボクが初めて運転したBMWは、2002tiだ。そもそも1600-2と呼んだ1.6Lエンジンが標準のボディに、2Lエンジンを載せたクルマだ。走らせてみるとすべてにゆとりがあり、無理しなくても速いクルマだった。走り出すまでは緊張したが、10mも走ってしまえばそのクラッチ、アクセル、ハンドルの扱いやすさにすぐにリラックスできた。さらにエクステリア、インテリア、走りのすべてが上質であったことも忘れられない。
現在、116iという4気筒1.6Lの4ドアハッチバックの1シリーズモデルがある。これはBMWブランドの中で一番小さなモデルだ。それを2ドアクーペに仕立て、直列6気筒3Lツインターボエンジンをボンネットの中に押し込んだと理解することもできるのが、新しい135iクーペである。
その最大の特徴は、直列6気筒の3Lエンジンながら、400Nmという並みの4L V型8気筒エンジン以上のトルクを出すことだ。それも、1300~5000rpmまでという幅の広い範囲で発生させるのだ。小さなタービンを2個備えたパラレルツインターボで、そこにターボラグがほとんどないことは335iでも実証されている。車重は標準状態で1530kgと335iより90kgも軽いので、その走りが刺激的なことは容易に想像できる。
ちなみに、V型8気筒4Lエンジンを搭載するM3の最大トルクも同じ400Nmである。ただその発生回転数は3900rpmだから、135iクーペの方が400Nmを発揮する範囲が広い分だけ有利だ。さらに車両重量もM3クーペの1630kgより軽いので、トルクウエイトレシオで見ると135iが勝っている。