アウディとポルシェは同じフォルクスワーゲングループに属するが、メカニズムに大きな違いがある。そこに共通性、独自性はないのか、それぞれの走りの資質はどのように実現されているのか。Motor Magazine誌では、アウディA5 3.2FSIクワトロをメインに、アウディTTクーペ3.2クワトロ、ポルシェ911カレラ4S、ポルシェボクスターSをまじえて試乗を行っている。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年7月号より)

ポルシェに乗って感じるスポーツへの純粋な心

目的地である会津・磐梯山のワインディングで待っていたのは、オレンジも鮮やかなアウディTTのV6クワトロSラインと、2台のポルシェだった。

2台のポルシェとは、即ち濃緑の911カレラ4Sと真っ赤なボクスターS。この4台のドライブトレーン構成は見事に異なる。今回の企画では、今それらがどのような存在として成立しているのか、それが重要なはずだ。

さすがだと思ったのは、やはり911カレラ4Sだ。このクルマの「芯」には一点の曇りもなく、「自家用スポーツ」の高みを志す純粋な念がある。それは歴史性を備えているからでもあるが、と言うことはつまり、現時代性を踏まえたものであるとも言うことができる。997型の911で言えば、今の時代に必須とされるものとは、安定であり、信頼であり、乗り心地であり、ステータス性ではないだろうか。

それとは裏腹に、911の本質であると思われる、昂揚と興奮と刺激とスポーツ性にも、決してぬかりがないから、911をスポーツカーの代名詞として世界中のクルマ好きが認めるのだと思う。今、世界の名だたるスポーツカーが目指しているのは、実はこのカレラ4のコンセプトやパフォーマンスではないだろうか。

それではちょっと高尚に過ぎる、もう少し気軽に純な気分でスポーツを楽しみたい、という多くのスポーツカーファンのためにボクスター&ケイマンを用意したあたりにも、ポルシェのしたたかな戦略が見てとれる。

実際、ボクスターSに乗れば、たとえそれがティプトロニック仕様であろうと、スポーツカーに不可欠な肉体的・精神的なリスク、つまりは痛みの予感=刺激を、911よりもずっと多く感じることができるのだった。

もちろん、現代の乗用車に必要な安心感は、ミッドシップカーであるがゆえに余計、必要とされるものだし、実際に備わってもいる。けれども、今となっては重いステアリングフィールや細身のハンドル、精気に充ちたエンジンフィールとサウンド、ハンドリングなどが、純なスポーツカーの世界を、ドライバーの求めに応じて見せてくれる。マニュアルミッションなら、もっとそうだろう。パワーが小さい分、ノーマルのボクスターならもっと手軽に純なスポーツフィールが味わえるはずだ。

いずれにしても、ポルシェに乗って感じるのは、たとえそれがSUVのカイエンであっても、いかにも「腰で乗っている」というフィーリングだ。スポーツに大切な身体の部位は、やはり腰なのだった。

画像: ポルシェ911カレラ4S。水平対向6気筒エンジンをリアアクスル後ろに搭載し後輪を駆動するRRレイアウトを基本に、シンプルなメカニズムの4WDシステムで前輪にも駆動を伝える。

ポルシェ911カレラ4S。水平対向6気筒エンジンをリアアクスル後ろに搭載し後輪を駆動するRRレイアウトを基本に、シンプルなメカニズムの4WDシステムで前輪にも駆動を伝える。

画像: ポルシェボクスターS。水平対向エンジンをミッドに搭載してリアアクスルを駆動する、いわゆるミッドシップレイアウト。運動性能に優れる一方でピーキーな特性になりやすいこともあってか、エンジンは911よりも小さなものが搭載される。

ポルシェボクスターS。水平対向エンジンをミッドに搭載してリアアクスルを駆動する、いわゆるミッドシップレイアウト。運動性能に優れる一方でピーキーな特性になりやすいこともあってか、エンジンは911よりも小さなものが搭載される。

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