小さなエンジンなのに低回転から大トルクを発揮
今回取材に用意した、フォルクスワーゲン パサート ヴァリアント2.0TSIスポーツライン、アウディA4 1.8TFSI、ポルシェ911ターボのうち、パサート ヴァリアントとA4は最新の直噴ターボ技術を投入した新設計のエンジンを搭載している。
パサートヴァリアント2.0TSIスポーツラインのエンジンは、2Lの排気量から200ps/5100-6000rpm、280Nm/1700-5000rpmを発揮する。これはパサートTSIコンフォートラインの1.8Lの160ps/5000-6200rpm、250Nm/1500-4200rpmをベースに排気量を増大したエンジンである。2Lエンジンでありながら、280NmというNAエンジン3Lクラスの最大トルクを、たった1700rpmから発揮するところがターボの威力だ。しかも、1700rpmから5000rpmまでという広い範囲で太いトルクを持続できるところが、新世代エンジンのキーポイントでもある。
パサート ヴァリアントの車両重量は1520kgであるが、必要にして十分以上の力を持っている。大きなラゲッジルームを持つヴァリアントだから、人と荷物をたくさん積んで走るというケースも考えられるが、必要とあらばアクセルペダルを深く踏み込むだけで登り坂でも問題なく走ってくれる。
実際に山道を走った時にも、登り坂を気にしないエンジンの力強さが感じられた。アクセルペダルを踏み込んでいった時のターボラグはないが、踏み込んでいく分だけモリモリとトルクが増していく感じがターボらしいところだ。低いエンジン回転数から力を発揮するし、そのトルク感がフラットなので、実に運転しやすい。アクセルペダルに対して過敏な反応はなく、力はあるのに品がある感じだ。
アウディA4 1.8TFSIに搭載されているエンジンは、パサートTSIに搭載される1.8Lと基本は同じだが、アウディ流の味付けによってスペックは若干異なり、160ps/4500-6200rpm、250Nm/1500-4500rpmになる。トランスミッションはパサート ヴァリアントがトルクコンバータを使った6速ATなのに対して、アウディA4 1.8TFSIはマルチトロニックと呼ばれるCVTと組み合わせている。このあたりのマッチングも見ているのだろう。
A4の車両重量は1510kgでパサート ヴァリアントと大きな差はないが、1.8Lと2Lの差はあまり感じなかった。2.5LのNAエンジンに相当する最大トルク250Nmをたった1500rpmから4500rpmまで発揮するのだから、不満が出ることはないはずだ。低いレシオから高いレシオまで幅広く使えるCVTとの組み合わせも威力も発揮しているようだ。アクセルペダルを踏み込んでいくとエンジン回転が上昇しながら加速していく。CVT特有のエンジン回転が一定のままスピードが上がる感覚はあまりないので違和感もない。しかも、加速感も大きい。
さらに床までアクセルペダルを踏み込んでいくと、タコメーターは5000rpm付近に上昇したままで加速していく。その回転数をスピードが越えそうになると、再びエンジン回転数が上昇。Dレンジから左に倒してマルチトロニックのマニュアルを選ぶと、MTのようにエンジン回転数とスピードが比例するようになる。スムーズに走らせれば、この直噴ターボエンジンの魅力をさらに引き出せるだろう。