911ターボのパワーも燃焼効率追求から実現
フォルクスワーゲンとグループを構成することになったポルシェは、1982年から始まったグループCカーによる、WEC(世界耐久選手権)においてターボエンジンを搭載したレーシングカー「ポルシェ956」で大成功を収めた。
そのエンジンは2.7Lの水平対向6気筒で、左右に2つのターボチャージャーを装着していた。コンパクトなエンジンから大きなパワーを絞り出すことがターボ装着の目的だったが、この時すでにダウンサイジングの考え方があったとも言える。
実際、ポルシェ956は極めて燃費が良く、当時の耐久レースをまさに席巻する存在だった。速くて、しかも燃費がいいから、ライバルは手がつけられなかった。ポルシェのあくなき燃焼効率への追求が生んだ勝利と言ってもいいだろう。
現在の911ターボやGT2などもターボを装着しているが、そのパフォーマンスからどうしても「走り」に振っているように見えてしまう。しかし、ポルシェ956同様、そのパワフルさは燃焼効率の追求から生まれたものであり、それはすなわち燃費にも大きく貢献することになっているのだった。
911ターボは3.6L水平対向6気筒に、可変タービンジオメトリーのターボを始めとした究極のテクノロジーを投入し、480ps/6000rpm、620Nm/1950-5000rpmという大きなトルクを発生する。さらにスポーツクロノパッケージプラスをオプション装着すれば、標準より0.2バールもオーバーブーストして公表最大トルクを上回る力を発揮することもできる。これにより10秒間だけ680Nm/2100-4000rpmというトルクを使えるのだ。
GT2は911ターボをさらにパワーアップして、530ps/6500rpm、680Nm/2200-4500rpmを発揮する。3.6Lだから、リッター当たり147psを越える。
ところが、燃費データを見ると、911ターボは12.9L/100km、GT2は12.5L/100kmという数字がカタログに記載されている。日本風に直すと、それぞれ7.8km/L、8.0km/Lとなる。4WDとRRという差を考慮する必要はあるが、GT2の燃費がよいことがわかる。
一見すると、フォルクスワーゲンとアウディの直噴ターボのあり方とポルシェ911ターボのあり方はまったく異なるように見えるが、燃焼効率の追求という点では共通する。パワーと燃費は必ずしも矛盾しないのだ。(文:こもだきよし/Motor Magazine 2008年7月号より)
フォルクスワーゲン パサートヴァリアント 2.0TSIスポーツライン 主要諸元
●全長×全幅×全高:4785×1820×1515mm
●ホイールベース:2710mm
●車両重量:1520kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:200ps/5100-6000rpm
●最大トルク:280Nm/1700-5000rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:426万円(2008年)
アウディ A4 1.8TFSI 主要諸元
●全長×全幅×全高:4705×1825×1440mm
●ホイールベース:2810mm
●車両重量:1510kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1798cc
●最高出力:160ps/4500-6200rpm
●最大トルク:250Nm/1500-4500rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:CVT
●車両価格:419万円(2008年)
ポルシェ 911ターボ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4450×1850×1300mm
●ホイールベース:2350mm
●車両重量:1580kg
●エンジン:対6DOHC
●排気量:3600cc
●最高出力:480ps/6000rpm
●最大トルク:620Nm/1950-5000rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速MT
●車両価格:1858万円(2008年)