Motor Magazine誌は2008年7月号の特集でポルシェ、アウディ、フォルクスワーゲングループの動きに迫っている。SUV、スポーツカーの分野の次にMotor Magazine誌が注目したのが「パワーユニット」。3つのブランドで求めるものは異なるが、パワーを追求したモデルも、燃費を重視したモデルも、燃焼効率を高めるという意味では同じということ。それぞれのブランドのパワーユニットの考え方とアプローチをパサート、アウディ A4、ポルシェ 911の3台の試乗をとおして検証している。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年7月号より)

燃焼効率の追求、キーワードは直噴ターボ技術

フォルクスワーゲンとアウディに搭載されるエンジンから、新しい思想と技術を見ることができる。

パワー、トルク、燃費、排出ガス、軽量化、コンパクト化など、エンジン開発に対する要求項目は多くなる一方だ。それを解決する有効な手段として、「走り」と「効率」の性能を高い次元で両立させることができる直噴ターボを採用しているのだ。

エンジンの効率化のキーとなるのが直噴技術だ。通常のポート噴射がインテークマニホールドで空気と燃料が混合し、その混合気を燃焼室内に吸い込むのに対して、直噴は燃焼室内に直接燃料を噴射して燃焼室を冷やすことで、より多くの酸素を取り入れて燃焼効率を上げることができるのが特徴。またこれによりノッキングなどの異常燃焼を抑えることができるので、圧縮比を上げることができる。これによりさらに燃焼効率が良くなる。

しかも、直噴はアクセルに対するレスポンスを向上させることができる。ポート噴射と違って、アクセルのオンとオフに対して緻密に燃料供給をコントロールし無駄なく反応させることができるからだ。この無駄がないということが、燃費の向上につながる。

燃料噴射を細かく制御できる直噴は排出ガスのコントロールも得意とする。メインの噴射だけでなく、プレ噴射、ポスト噴射を行うことによって、きめ細かく燃焼をコントロールできる可能性を持っている。燃焼効率が良いということは、排出ガスもクリーンになるということだ。

こうした技術はディーゼルエンジンで先行して開発されたものだ。ヨーロッパでは乗用車の販売台数の半分以上がディーゼルエンジンである。そもそもは燃費に有利なディーゼルエンジンであったが、直噴とターボの技術を採用することによってスポーティなエンジンに仕上がり、大きく注目されることになった。燃費がよくスポーティに走れるから、多少イニシャルコストが高くてもユーザーを十分に納得させることができた。そのスポーティな「走り」が大きなアドバンテージになっていることも重要なポイントだ。

こうしたディーゼルエンジンの直噴ターボ技術をガソリンエンジンに投入したのが、フォルクスワーゲンとアウディのTSIやTFSIなのだ。

直噴ターボエンジンの燃費が良い理由のもうひとつに、エンジン排気量を小さくできることがあげられる。アクセルペダルを踏み込んでパワーを出す時には多くの空気を吸い込み、それに見合った燃料を噴射するものの、アクセルペダルを踏み込まない時は単なる小さな排気量のエンジンとなるわけだ。

わかりやすいのはアイドリングである。アクセルを踏まない状態のアイドリングでは排気量に比例した燃料を消費する。アイドリング時の燃料消費量という点では、エンジン排気量が決定的な要素となるわけだ。

画像: 2008年5月8日、新たに設定された2.0TSIエンジン搭載のパサートヴァリアント「2.0TSIスポーツライン」。

2008年5月8日、新たに設定された2.0TSIエンジン搭載のパサートヴァリアント「2.0TSIスポーツライン」。

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