ドイツ(当時は西ドイツ)は、自動車立国ともいえるくらい自動車づくりに力を入れてプライドを持っていたが、ほかの国と同様に、この頃その自動車に対して疑問が持たれて、少し肩身が狭い時代だった。そんなこともあって、ゴルフ3はややダイナミックさに欠けて、いかにも優等生的であるが、とくにその後のゴルフ4や5に比べれば、少し地味な印象だったといえるかもしれない。大きなV6エンジンを積んだことについても、半ば本音でもあったろうが、上級モデルからのダウンサイズの役割があるという、やや言い訳じみた説明もしていた。
安全面が充実したのも、環境と同様、社会背景があったといえそうだが、とくに注目すべき技術としては、1992年から、運転席と助手席のエアバッグが初めて採用された。
スタイリングの変化でとくに目立つのは、ヘッドランプである。初代と2代目が丸型ランプだったのに対し、初めて異形ヘッドランプが採用された。ただ、これは楕円型であり、先代までとの連続性が感じられるように考えてデザインされたものだった。フロントマスクは「小顔」になった印象で、それはボディの四隅が丸められ、フロントエンドが絞り込まれていたからである。これは空力のためであり、燃費向上のために先代よりもさらに空力性能を追求。Cd値は0.30〜0.33とかなり優秀なものになっていた。また全長が4020mmで旧型からほとんど変わっていないのに対し、トレッドは広がっており、車体はちょっと太っているように見える。
バンパーにはまだブラックの部分は残されているがボディ同色となり、形状としてもボディ本体と融合するようになった。ボディサイドでは、ショルダーラインの少し低めの位置に全長にわたって大きな段差のラインが入れられており、これが横から見た際の3代目ゴルフの特徴となっている。ボディは全体に角がスムーズに丸められて、車体の工作精度が上がり、またボディ剛性も上がって品質の向上が感じられた。
ゴルフ3は、歴代ゴルフの中ではやや地味な存在ではあるが、華やいだイメージのある次のゴルフ4につながるような進化を、着実に続けていたのだった。(文:武田 隆)