モデルチェンジの端境期だった1年
2020年に登場したスポーツカー/スーパーカーを振り返ってみると、フェラーリ ローマ、BMW 4シリーズ、マクラーレンGTの3台以外は、すでにデビューしているモデルの派生車種として追加されたか、既存モデルの熟成版が大半を占める。
その意味では小粒な1年だったと言えなくもないが、これが新型コロナウイルスの影響だったと考えるのはいささか早計。確かに感染症の影響で開発や生産に微妙な遅れが生じたケースはあったようだが、通常5年も6年も前に決まっている開発、生産計画が大幅に見直されたという話は聞いたことがない。だから、たまたまモデルチェンジの端境期が重なっただけと考えた方がよさそうだ。
そこでまずは筆頭で取り上げたいのがフェラーリ ローマである。コンバーチブル仕様のポルトフィーノがすでに確固たる地位を築いている中、ローマをどんなキャラクターで仕上げるのかが注目されていたが、フェラーリのお家芸であるF1/モータースポーツはおくびにも出さず、ひたすらエレガント路線を追求してみせた。
「フェラーリのラグジュアリー感は欲しいけれど別にスポーツカーが欲しいわけではない」という潜在的なニーズは間違いなく存在していたと思われるので、ローマのエレガントなスタイリングや快適な乗り心地はそういった層に確実にアピールしたはず。しかも、本気で走ればフェラーリらしいパフォーマンスの高さも実感できるという念の入れよう。おかげで売れ行きは世界的に好調だと聞くが、それも当然の結果だろう。
ライバルというべきランボルギーニからは、ウラカンEVOの後輪駆動版が登場した。オリジナルのウラカンRWDはコントロール性重視のしなやかな足まわりが特徴だったが、EVOははっきりとパフォーマンス方向に振られて強靱なサスペンションを装備。スーパースポーツカーらしい硬派な走りごたえを手に入れた。