ワゴンであることを言い訳にしないクルマ作り
セダンには真似のできない高いユーティリティ性を手にする一で、「走り」のポテンシャルにはある程度見切りを付ける。これはかつて、ステーションワゴンを名乗るモデルでの、ある意味ひとつの「約束ごと」だった。
たしかに理屈上からは、ステーションワゴンは3ボックス型のセダンに比べて、高い運動性能を実現するためのハードルとなる材料がいくつも並ぶ。
ルーフを後方まで伸ばし、ボディ後部の平面絞りも控えめにせざるを得ないとなれば、当然それは重量の増加に直結する。大きなテールゲートの開口部がリアセクションを中心にボディ剛性を低下させる要因となるのも必然だ。リアシートのアレンジ機構はステーションワゴンには不可欠のアイテムだが、そのためにリアシート後方に荷物室との隔壁を設けるわけにはいかなくなるのもボディ剛性面では辛い点。だからと言って、そんな剛性低下を補填するための補強策を講じれば、さらなる重量増加を招くことも目に見えている。
そんなこんなで、かつてのステーションワゴンは下手をすればベースとされたセダンとは「別グルマ」かと思えるほどに運動性能を低下させ、走りの質感全般も大きくダウンさせてしまうものが少なくなかった。けれども、今ではそんなステーションワゴンを良しとするユーザーなどいないだろう。
セダンに対するハンディキャップは今でも厳然と存在するものの、それをエクスキューズとした商品作りは許されないということ。それどころか、セダンと同様、あるいはそれを凌ぐハイパフォーマンスモデルをラインアップに加えるのが、このところのステーションワゴンづくりの「当たり前」だ。
そんなスーパーワゴン界の頂点に立つのが、アウディが満を持してリリースしたRS6アバント。そもそもアウディは、自らのプレミアム性をステーションワゴンで表現することを得意とするメーカー。それだけに、アウディにとってこのモデルはまさに待望の存在でもあったはず。なぜなら、RS6アバントに秘められた内容は、従来のあらゆるメーカーの、あらゆるステーションワゴンのそれを大きく凌駕するものであるからだ。